藍沢先生。3 (ページ23)

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ー no side ー

フェローシップの五人に簡単な院内案内を終えた頃、ヘリが戻ってくることをしらせる無線が鳴った。

「静脈ろ確保、500ミリの急速輸液中、レベルワン確保しといて」

ヘリの無線から黒田の声が入る。

すぐに、三井が患者情報をホワイトボードに記していく。

「翔北了解」

「脳外の西条先生はオペ中。あとで様子見に来るって」

看護師が必要なものを用意する中、ふと彼女の視界に入ったボードに貼られた5人の写真と名前の紙。

「フェローシップの？」

「そう、新人君」

「5人かぁ、いつもより多いねえ」

「…何人残るかなあ」

三井は、髪を束ねながらそう言った。

そしてその頃、森本率いるフェローたちは、患者を迎えにヘリポートへと向かっていた。

ちょうど着いた頃に、ヘリが着地した。

処置室についてすぐ、冴島より現在の患者状況が伝えられあちこちで言葉が飛び交う。

「心電図つけますよー」

「左手に点滴します！」

「ズボン切りますよー」

「レベルワン繋ぎます」

そんな声が飛び交う中で、藍沢は1人、少し微笑みながら期待に胸を高鳴らせていた。

そしてそのとき、患者の容態が急変し、心電図モニターが音を鳴らす。

黒田の「挿管してくれ」の声に、まず藤川が手をあげ挿管を試み、緋山はファストを始めた。

彼らが処置を続ける中でもモニターの音は鳴り続け、更に吐血もあった患者には気管挿管が出来ず、気管切開をして酸素投与をすることになった。

黒田が切開をしようとしたところに、藍沢が入り「メス下さい」と手を伸ばした。

その瞬間、ピリッとした空気が更に重くなり、みんなの視線が藍沢に向けられた。

しかし藍沢は、何も気に留めず切開場所を確認した後、慣れた手捌きで処置を行った。

「よし、ファストは？」

「心嚢液、貯留ありません。モリソン窩に貯留液なし、ダグラス窩貯留液なし、ファストネガティブです」

「どうかな」

三井がすかさず緋山の手から「貸して」とプローブを取ると、液体貯留が見つかり、「もういいから」と藤川と同じように蚊帳の外へ掘り出された緋山。

「ファストで認識しにくい出血部位は」

「後腹膜の出血。特に後位の後腹膜で、膵損傷、腎損傷、腰椎骨折に伴うもの」

藍沢、佐藤が答えようとしたところにすかさず白石が答え、今度は白石に視線が集まった。

「だと、思います…」