藍沢先生。2 (ページ30)

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陽斗をAの実家で預かって貰っているため、今日は久々にめぐり愛で1人呑もうと思い店に行くと、入って早々元患者大山恒夫(メリージェーン洋子)に抱き締められ、キスまでされた。

気持ち悪い。

さらに、奥には先程まで一緒にいた白石と緋山がいて、最悪だ。帰ろう。

そう思い引き返すと、緋山が「人の顔見て帰るとか気分悪いよ」と言い、無理矢理席に着くことに。

お酒もお互いそれなりに入り、白石と緋山が話しているのを俺は聞いていた。その内容は俺がシャイだとか、ばあちゃんっ子だとか。Aの前では優しかったりして？きゃーとか言って騒いでいる。

なにが楽しいんだ。

「久々にブス2人揃ったと思ったらこれだもんねぇ、ごめんね？だーりん、ははは」

「んー！恒夫！」

「なに」

「今ブスって言った」

「あれ？これさっきの、」

「ん？」

「あの子じゃない？」

「あーほんとだ、あのこだ」

視界の隅に、天野奏が表紙の雑誌を緋山が持っているのが目に入る。

「ええ、すごい」

「相当気にいられてたねー、藍沢先生、なんで、脳外やめちゃったのぉ？」

緋山のモノマネかはしらないが、二人して笑っている。

言われるとは思っていたが。何も言わない俺を見て、白石は嬉しいくせに、と言った。

「彼女は人生のすべてをピアノに捧げている。俺達が24時間、医療に費やしているのと同じように。」

「そして彼女には、才能もある」

「ふーん。いいねぇ、才能もあって認められておまけにこんな可愛くてさあ。運のいいこっているんだねー」

「.. 小脳に腫瘍がある。手足の動きを司る様々な中枢が入り組んでいて、.. できれば触りたくない位置だ。」

「今日の検査で、3.5センチを超えていた。」

俺の言葉に、白石は黙り込み、緋山はそうなんだ、とだけ告げた。

「不条理だ。」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿神様は、なぜこんなにも意地悪なんだろうか。