藍色の好意 １ ページ26
ゴールデンウィークも後半に入った５月３日、ミシロランドという遊園地に高校生６人が遊びに来ていた。
「あれ、藍瀬君、いつの間にポップコーンなんて買ってきたの？」
ポップコーンがたっぷり入ったバケツを首から提げた藍色のシャツを着た藍瀬にAが少し笑いながら尋ねた。
「むしゃむしゃ……」
彼は喋ろうとしているのかもしれないのだが、口はポップコーンが常時その空間を占めているので何を言っているのか分からない。むしろポップコーンが今にも飛び出してきそうだ。
「あ……やっぱりいいや……」
Aは申し訳なさそうな顔で藍瀬から少し距離を取ると、彼女の後ろを歩いていた黒宮に
「黒宮さん……いけそう？」
と振り返りながら尋ねる。
「……まだ……無理」
黒宮は震えた声で答え俯いてしまう。一体どの様な表情をしているのか窺い知ることは出来ない。
「こりゃあ難しいなぁ」
そんな黒宮の様子をAが眺めていると彼女の前方を歩いていた音無と金内が後ろを振り返った。
「ん、どうしたんだよ、水田。なんかすごい口元が緩んでるぞ。なぁ金内」
「うん。なんて言うかこの状況楽しんでない？」
「な、何言ってんの!?そんなわけ……」
Aが否定しようとすると、
「むぐむぐむぐ……ごっくん………ねぇ観覧車乗ろうよ」
ポップコーンのバケツを空にしてしまった藍瀬が敷地の奥の方で回り続けている観覧車を指さしながら提案した。
「観覧車か……」
金内の隣にいた黄佐野が歩きながら観覧車を遠くから口をぽかあんと半開きにして呟いた。
A「それだっ！」
黒「!?」
A「ちょっと待っててねっ」
何かを思いついたらしいAは観覧車の方へ走っていってしまった。
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作者名：フラスコさん | 作成日時：2014年9月6日 9時
