第362話🦇懸念 ページ27
*シャオロン side*
連れていかれるリシェルを見送るミラの口が、ほんの微かに動く。
「当主の座なんて…降りれるもんなら、とっくに降りてるわ……」
その呟きとひどく悲しげな表情が、なんとなく気になってしまって。
「ミラ……?」
恐る恐るその名を呼ぶと、彼女はパッと雰囲気を一変させて俺たちのほうを向いた。
「改めて、今回はなんや身内絡みで迷惑かけてしもてごめんな。あとはこっちで片付けるから」
「いやいやッ! ミラさんが謝ることじゃないですよ!」
「そうそう。悪いのは、あの女なんやろ? そのくらい、部外者の俺らでもわかってるで」
チーノとロボロの言葉に続く形で、俺はゆっくりと口を開く。
「それに……謝らなアカンのは、俺のほうや。俺を庇って、お前は……」
俺の言いたいことを察したのか、ミラはふっと笑ってこう言った。
「あんさんは悪くあらへんやろ。むしろ……アタシらの問題に巻き込む形になってしまって、ごめんな。とにかく、みんなが無事で良かったわ!」
「ッ……! うん……そう、やな」
彼女の笑顔を前に、ずっと残っていたしこりが綺麗に取り除かれた心地がした。
「みんな、ホンマにありがとう。生徒会も、ご協力ありがとうございました」
深々と頭を下げるミラに、アメリ会長と残っていた生徒会メンバーは微笑をこぼす。
「気にするな。お前には、
「んふふっ、ほなそういうことにしときましょ♪ それじゃ、帰宅許可も出たことやしアタシ帰りますわ。みんな、また明日な〜」
ひらりと手を振り去っていくミラを見送りながら、俺たちは誰からともなく顔を見合わせる。
「……ミラさんのメンタル…結構心配してたけど、案外大丈夫そうやったな」
「やっぱ強いなミラは!!」
「うーん……だといいですけどねぇ」
トントンとゾムの言葉とは対照的に、チーノが不安げにぼやく。
「何か気になるんか?」
大先生の問いかけに、チーノは微妙な顔で答えた。
「問題は、ここからじゃないですか? 家帰ったら、いろいろゴタゴタしてそうやし…そのことで、負担がかからないといいんですけど……」
確かに……帰ってからが大変そうやな。つっても、俺らにできることはいつも通り接してやることだけやけど……。
ミラの奴……大丈夫なんやろか。
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作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2022年9月11日 21時