検索窓
今日:19 hit、昨日:53 hit、合計:38,655 hit

第362話🦇懸念 ページ27

*シャオロン side*

連れていかれるリシェルを見送るミラの口が、ほんの微かに動く。


「当主の座なんて…降りれるもんなら、とっくに降りてるわ……」


その呟きとひどく悲しげな表情が、なんとなく気になってしまって。

「ミラ……?」

恐る恐るその名を呼ぶと、彼女はパッと雰囲気を一変させて俺たちのほうを向いた。

「改めて、今回はなんや身内絡みで迷惑かけてしもてごめんな。あとはこっちで片付けるから」

「いやいやッ! ミラさんが謝ることじゃないですよ!」

「そうそう。悪いのは、あの女なんやろ? そのくらい、部外者の俺らでもわかってるで」

チーノとロボロの言葉に続く形で、俺はゆっくりと口を開く。

「それに……謝らなアカンのは、俺のほうや。俺を庇って、お前は……」

俺の言いたいことを察したのか、ミラはふっと笑ってこう言った。

「あんさんは悪くあらへんやろ。むしろ……アタシらの問題に巻き込む形になってしまって、ごめんな。とにかく、みんなが無事で良かったわ!」

「ッ……! うん……そう、やな」

彼女の笑顔を前に、ずっと残っていたしこりが綺麗に取り除かれた心地がした。

「みんな、ホンマにありがとう。生徒会も、ご協力ありがとうございました」

深々と頭を下げるミラに、アメリ会長と残っていた生徒会メンバーは微笑をこぼす。

「気にするな。お前には、解散選挙(タイマン)の時の礼もあったしな……お互い様だ」

「んふふっ、ほなそういうことにしときましょ♪ それじゃ、帰宅許可も出たことやしアタシ帰りますわ。みんな、また明日な〜」

ひらりと手を振り去っていくミラを見送りながら、俺たちは誰からともなく顔を見合わせる。

「……ミラさんのメンタル…結構心配してたけど、案外大丈夫そうやったな」

「やっぱ強いなミラは!!」

「うーん……だといいですけどねぇ」

トントンとゾムの言葉とは対照的に、チーノが不安げにぼやく。

「何か気になるんか?」

大先生の問いかけに、チーノは微妙な顔で答えた。

「問題は、ここからじゃないですか? 家帰ったら、いろいろゴタゴタしてそうやし…そのことで、負担がかからないといいんですけど……」

確かに……帰ってからが大変そうやな。つっても、俺らにできることはいつも通り接してやることだけやけど……。


ミラの奴……大丈夫なんやろか。

第363話🦇ヒトリゴト→←第361話🦇実力主義の家系



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2022年9月11日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。