第372話🦇俺の“お気に入り” ページ37
*ラッダァ side*
「ぶべッ!?!?」
「あ」
こちらに突撃してきたそのヒト影を真正面から受け止めてしまい、俺は耐えきれずその場に倒れ込んだ。
「も〜、飛びつく直前で振り向かんといてくださいよ〜。せっかく驚かせてやろうと思ったのに！」
「じゅ、充分驚いたわこの悪ガキ……」
俺にこんなぶっ飛んだことをしてくる悪魔は、彼女――ミラしかいない。
「たくッ、元気そうで何よりだな……。んで、わざわざすっ飛んできて何か用か？」
俺を押し倒していた彼女は、パッと飛んでケラケラと笑った。
「別に用は無いですよ？ ただ……今は殺し合い仕掛けられるほど魔力無いから、いつもとは違う感じでちょっかいかけてやろうと思いまして！」
全く悪びれる様子無く言いきりやがったソイツに、俺はもはや怒りを通り越して呆れた。
「何だそりゃ……。てか…今の言い方だと、魔力回復したらまた殺し合い仕掛けてきそうな感じだけど……」
「え、ダメなんですか？」
至極不思議そうにそう言った彼女に、俺は逆にキョトンとしてしまった。
「いや、だって……え？？」
あんなことがあったのに、前と変わらず……殺り合ってくれるというのか？
「お、俺は全然いいけど……その、大丈夫…なのか？」
「！……あはっ、心配してくれはるんですね。やっさし〜」
口ではおちゃらけつつも、彼女は察したようにふっと笑みを浮かべる。
「ね、先生。アタシって知っての通り、楽しいこと大好き悪魔なんですよ。そして……―――一度手に入れた“楽しいこと”は、何が何でも手放したくない。この意味……わかりますよね？」
口角をつり上げてそう告げた彼女に、俺はゾクッとした。
あぁ、そうか……お前はそういう奴だったよ。―――だからこそ、俺はお前を気に入ったんだ！！！
「……ッたくよ〜、そこまで求められちゃあしょうがねぇなぁ」
「とか言って、先生も満更でもないんでしょ？」
全て見透かすようなその瞳に、俺はとっくに魅せられていて。
「……ああ、そうだな。“お前”との殺し合いは、最高に楽しい。だから……万全な状態になったら、また来い。相手してやっからよ」
ほくそ笑みながら見据えると、ミラは嬉しそうに笑って頷いた。
「約束ですよッ、ラッダァ先生！！」
やっぱ俺は……たとえどんなに強かったとしても、薬で無理矢理操られたお前は嫌だな。
早く、“本当のお前”とまた殺り合いたいなぁ……！！
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作者名：空文 晴霧 | 作成日時：2022年9月11日 21時
