検索窓
今日:26 hit、昨日:36 hit、合計:36,758 hit

第288話🦇淫魔の苦悩 ページ49

*ウツ side*

「……いや〜、ごめんなぁミラちゃん。嫌な思いさせてしもて」

俺は今……上手く、笑えているだろうか。

「いや、アタシは別に___」

「まぁ、そもそも悪いんは僕なんやけどな。あの子だって、言うなれば僕の被害者みたいなもんやし。僕への怒りがねじ曲がってしまっただけやと思うから、さっきのはホンマ気にせんとってな。心配せんでも、ミラちゃんは充分かわいいから♡」

なるべくいつもの調子でそう言ってみるも、彼女の表情は晴れない。

その曇った顔を前にし、僕は自嘲じみた笑みを浮かべた。

「……って、僕が言うたって信用できひんか。なにせ、ああやっていろんな女の子泣かしてきたクズやし……」

「……違うで、ウツ」

僕の名を呼んだ彼女は、ひどく真っ直ぐな瞳で僕を見据える。


「一番泣きたいんは……アンタやろ?」


「……………へ?」

硬直して立ち尽くす僕だったが、彼女の真剣な表情を見ているうちに平静を保てなくなってきてしまって。

「……僕もさ、わかってるんよ。こんな男、最低やって。それでも僕は、俺は……たくさんの女を本気で追い求めてしまう。淫魔(インキュバス)だから……なんて、何の言い訳にもならへん。全部俺の問題や。でも、でもな…それでも俺は、本気で……」

ミラちゃんのことも……自分なりに、本気で愛してるつもりだった。

けど、本人にはいつも軽くあしらわれてしまう……その原因が、全て俺にあることもわかっていた。

もし…もしも俺が、淫魔(インキュバス)のクズ浮気野郎なんかじゃなかったら…ミラちゃんも、僕の想いに応えてくれる…なんて未来も、あったんかなぁ……?

「ごめん…こんなん言うたって、クズ男の言い訳にしか聞こえへんよな……」

語っているうちに情緒がグチャグチャになってきて、ついには情けなく涙があふれ出てきてしまう。

そんな俺を―――彼女は、優しく抱き締めてくれた。

●あとがき●→←第287話🦇真に責められるべきは誰か



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (59 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2022年8月22日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。