第288話🦇淫魔の苦悩 ページ49
*ウツ side*
「……いや〜、ごめんなぁミラちゃん。嫌な思いさせてしもて」
俺は今……上手く、笑えているだろうか。
「いや、アタシは別に___」
「まぁ、そもそも悪いんは僕なんやけどな。あの子だって、言うなれば僕の被害者みたいなもんやし。僕への怒りがねじ曲がってしまっただけやと思うから、さっきのはホンマ気にせんとってな。心配せんでも、ミラちゃんは充分かわいいから♡」
なるべくいつもの調子でそう言ってみるも、彼女の表情は晴れない。
その曇った顔を前にし、僕は自嘲じみた笑みを浮かべた。
「……って、僕が言うたって信用できひんか。なにせ、ああやっていろんな女の子泣かしてきたクズやし……」
「……違うで、ウツ」
僕の名を呼んだ彼女は、ひどく真っ直ぐな瞳で僕を見据える。
「一番泣きたいんは……アンタやろ?」
「……………へ?」
硬直して立ち尽くす僕だったが、彼女の真剣な表情を見ているうちに平静を保てなくなってきてしまって。
「……僕もさ、わかってるんよ。こんな男、最低やって。それでも僕は、俺は……たくさんの女を本気で追い求めてしまう。
ミラちゃんのことも……自分なりに、本気で愛してるつもりだった。
けど、本人にはいつも軽くあしらわれてしまう……その原因が、全て俺にあることもわかっていた。
もし…もしも俺が、
「ごめん…こんなん言うたって、クズ男の言い訳にしか聞こえへんよな……」
語っているうちに情緒がグチャグチャになってきて、ついには情けなく涙があふれ出てきてしまう。
そんな俺を―――彼女は、優しく抱き締めてくれた。
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作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2022年8月22日 9時