第265話🦇“想い”は“救い”に ページ26
*ショッピ side*
互いにしばらく無言で飛んでいたが、この空気感に耐えきれなくなり、俺は思わず口を開いた。
「……あの、ミラさん」
「はい?」
こちらを向いた彼女に、俺は独り言に近い感覚で言葉をこぼす。
「もしピコが、俺の使い魔だったら…“絶対別れたりせん”って、少しは安心してもらえたんかな……」
俺の呟きを聞き、ミラさんは視線を前へと戻す。
「んー……まぁアタシの口からは、『そうかもしれん』としか言えませんわ。ただ、キツイこと言うかもしれませんけど……実際、今のショッピ先輩とピコを繋げる確固たるモノは、何1つ無いんですよ」
その核心を突く鋭い一言に、ズキリと胸が痛む。
「……やっぱ、そうですよね。トントンさんとトンみたいな、そんな強い結び付きなんて…俺らには……」
「はい、無いですね。……だからこそ、絶対にピコのことを忘れないであげてください」
不意に柔らかい声色になったミラさんに顔を上げると、彼女は優しい微笑みを俺に向けていた。
「アタシ、常々思ってるんですよ。“思い出”ってモンは、案外馬鹿にできへんのやないかなって」
「思い出……」
「はい。どちらかが相手のことを覚えてさえいれば、思い出は永遠に生き続ける。……過去のことにするのは、悲しいことかもしれませんけど。思い出があるだけでも、救われることもあるんかなって」
どこか真に迫るその言い方に、俺は何も言えず聞き入ってしまう。
「……あ、もちろん先輩とピコのことを過去のこととして諦めてるわけやないですよ! ただ……先輩がピコのことを想ってるだけで、ピコは救われるんじゃないかなって。そう思ったんです」
俺が、ピコを想うことで…ピコも、救われる……?
「まぁ何が言いたいかといいますと、そないに先輩が落ち込むことあらへんよってことです! また明日、元気な顔見せに行ってあげましょ!」
ニッと笑ってそう言ってくれた彼女に、俺は小さく笑みをこぼす。
「……よかったら、ミラさんも一緒に来てくれますか?」
「! もちろん喜んで!!」
まだ、完全に悩みが晴れたわけではないけど……彼女の言葉のおかげで、ほんの少しだけ前を向ける気がした。
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作者名:空文 晴霧 | 作成日時:2022年8月22日 9時