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「廉の為だから。またあいつがお前のせいで辛い思いをしないようにしただけだ。」
「それ･･･どういう意味？」
紫耀の声が低くなる。
瞳も鋭くなって、俺の事を警戒してるのだろう。
「お前、俺が止めなかったらあの人と寝るつもりだったろ。またそうやって廉を裏切ろうとしただろ。ほんとお前･･･あいつが･･･廉がいつも自分の傍に居るのが当たり前なんて思ってんじゃねえぞ？廉がいつもどんな気持ちでお前の傍に居るか、考えた事あんのか？廉がいつもどんな気持ちでお前の背中を見てんのか、考えた事あんのか？」
「それは･･･。」
俺の言ってる意味を理解したんだろう、少し動揺し始める紫耀。
「お前がこのまま何も変わらないなら･･･廉の事をちゃんと見てやらないなら･･･俺がお前から廉を奪ってやるから。」
「は？何言ってんの？そんな事･･･岸君に出来る訳無いじゃん。」
俺の言葉に薄ら笑いを浮かべて、そんな事がある筈無いと高を括っているんだ。
廉が自分から離れる筈が無いと。
「出来る訳無い？それはどうかな？俺は本気だから。俺はずっと廉の事･･･でも、廉はお前を選んだから･･･だから諦めようと思ったんだ。でも、お前の傍でずっと辛そうな顔する廉の事、もう見てらんない。俺なら廉にあんな顔させない。俺の方がお前よりも廉の事を大切にしてやれる。お前よりも絶対に幸せにしてやれる。お前みたいに廉を絶対に泣かせたりなんかしない。お前みたいになんか･･･。」
今まで思っていた事を紫耀に打ちまけてやる。
紫耀のせいでどんなに廉が傷付いているか。
俺がそんな廉を守ってやりたいって。
「お前気付いてんのか？廉が見るからに痩せて窶れてんの。隈作って眼ぇ赤く腫らして。あいつソロの仕事が忙しいとか言ってけど、違うから。お前のせいで心労が祟ってんだよ。あれじゃあいつか廉は倒れちまうからな。」
「そんな･･･廉が･･･俺･･･俺はただ･･･。」
「廉はいつもお前のせいで辛い想いばっかりして･･･お前が廉を苦しめてるんだ。だから、お前が廉の事を愛してんなら、少しでも廉を可哀想だと思うなら、廉を解放してやってくれよ。あいつを自由にしてやってくれよ。」
多分、優しい廉は、自分から紫耀に別れを告げる事が出来ないだろうから。
だから、紫耀の方から廉を突き放して欲しくて。
そしたら俺が･･･紫耀に捨てられて傷付いた廉を慰めてやるんだ･･･。
俺が傍に居るからって、俺が愛してやるからって。
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作者名：弥勒
| 作成日時：2022年4月20日 0時
