９ ページ9
それからの紫耀はまるで憑き物が落ちたみたい。
物凄く落ち着いていて、色々詮索したり一々束縛したりせんようになって、俺の自由にさせてくれるようになった。
それである日、気になって訊いてみた。
「あのさ？紫耀、無理してん？」
俺の部屋で二人きり。
お互いにシャワーも浴び終わってソファでゆっくりと寛いで。
俺は紫耀に膝枕して貰ってて、紫耀は俺の髪を優しく撫でてくれてて。
「え？何が？」
「いや、最近あんまり色々訊いてこんようになったし、俺が出掛けても何も言わんようになったし･･･何かまた我慢してるんやないかって･･･。」
また不安を一人で抱えてるんやないかって、それを俺に言えずにいるんやないかって。
「ああ、ははっ、そうだなあ･･･だって俺、廉の事信じてるから･･･ううん、信じられるようになったからさ。」
そう言う紫耀の顔は穏やかやった。
もう前みたいに何かに追い詰められたような表情や無かった。
「そうなん？」
「うん。何かさ、今はさ、俺は俺の好きになった廉を信じようって思えて。そしたら何か、色々焦ってたのがバカみたいに思って。だって、廉は俺がどんなに理不尽な事を言ったりやったりしても、いつだって全部俺の言う事を聞いていてくれたのに。廉はずっと俺の傍に居てくれたのにって･･･。」
「ああ、それは･･･まあ･･･。」
だって、どんなに紫耀に無理を言われても、そうしてやっても良いって思える程に紫耀の事が好きやったから。
「ん？何？」
あの頃とは違って優しい顔で俺を見つめてくる。
「ふふっ、やっぱり･･･俺は紫耀の事が好きやなあって思って。」
「廉･･･。」
嬉しそうに微笑んだ紫耀の顔はめちゃめちゃ綺麗やった。
うん、やっぱり好きやわ。
「なあ？紫耀。」
「うん？なあに？廉。」
優しく髪を撫でる紫耀の手が気持ち良い。
「あのさ、前みたいに力任せで痛くされんのは嫌やけど･･･偶にはさ･･･。」
「え？痛く？偶に？」
紫耀が俺の言葉にちょっと動揺しとる。
「ちょっと激しくされんのも･･･ええかなあ･･･って･･･。」
「え？」
そうや･･･あの頃みたいに、偶には激しく求められるのもええかなって。
必死な顔して俺を抱く紫耀をまた見たいなって思ったりして。
そう言うたら紫耀の目ん玉が落ちそうなくらい見開かれて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 434人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：弥勒
| 作成日時：2021年11月6日 0時
