１ 美味しい唇（しょうれん） ページ46
廉side.
「ねえ、廉。紫耀が･･･。」
「おん、分っとる。」
ある日、雑誌撮影の為に集まった楽屋で、海人が俺に言う。
「何かもう、見てらんないな。」
岸さんも辛そうな顔をして。
「廉、頼むよ。俺ではもう･･･。」
「･･･分かった。」
一言だけ答える俺。
神でもどうにも出来んくらいなんか･･･。
此処の所の紫耀の忙しさは、尋常やない。
映画《かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜ファイナル》の撮影が終わってすぐ、《24時間テレビ》ドラマ《生徒が人生をやり直せる学校》の撮影があって。
ドラマの撮影中は、《24時間テレビ》と映画との宣伝で、雑誌やテレビのインタビューや撮影が幾つも重なって。
おまけに、全国ツアー《King & Prince CONCERT TOUR 2021 〜Re:Sense〜》の準備とリハもあって。
あまりの多忙を極め、俺等も音を上げる寸前やった。
そんな中、紫耀は見る度に痩せていって。
その身体だけやなく、精神的にも、だいぶ追い詰められていたよう。
スタッフさんやメンバーが話し掛けても、反応しない事もあったくらい。
2021年の夏は、紫耀にとって今迄に無く、めちゃめちゃ忙しい夏になったやろう。
それは俺等メンバー全員、紫耀に負担が掛かり過ぎやと心配になる程。
でもそれは紫耀の仕事であって、俺等メンバーの誰かが代わってやる事も出来んくて。
俺等は傍で紫耀が疲弊していくのを、ただ見てるしか出来んかった。
勿論メンバーも、紫耀の代わりに出来る事はやっていたけれども。
メンバーもそれぞれの仕事があって、皆が皆、忙しい夏やったんや。
それこそ俺自身も、ドラマや映画でスケジュール的にも、演じる役的にもしんどいのが多くって。
それでも俺等メンバーが一緒におる時は、なるべく紫耀を休ませるようにして、代われる事は代わってやった。
少しでも紫耀の負担を減らそうと、俺等も必死やったんや。
俺等が何とかせな、紫耀が倒れてしまう。
メンバー皆が、そんな危機感を感じていた。
マネージャーなんかにも直談判したくらい。
紫耀を休ませてくれって。
でも、悲しいかな今の俺等は、紫耀一人の人気には及ばず、紫耀に頼らなあかん事が多くて。
メンバー全員が、どうしようもない事実に、やるせない気持ちになっていた。
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作者名：弥勒
| 作成日時：2021年11月6日 0時
