４ ページ29
「うん。分かってるよ。」
そしたらそう言って紫耀が俺の事を抱き締めてくれた。
「俺、ちゃんと分かってるから。」
「紫耀･･･。」
その手が優しく俺の背中を撫でてくれて、全部「大丈夫だよ」って包み込んでくれるみたいに。
そのまま暫く紫耀に身体を預けていた。
この身体に包まれると安心する･･･何ものからも守られてるような気がして。
この腕の中に居れば、俺は大丈夫やって思えて。
俺もその逞しい背中に腕を回してきゅうっと掴んだ。
そうして暫くそのままでいて。
「廉、ごめんね？」
「俺こそ･･･ごめん。」
漸く気持ちが落ち着いた頃、紫耀が俺に謝ってきた。
紫耀が謝る必要なんて無いのに。
だから俺も謝った。
「廉だって･･･俺のせいで大好きな子供の事諦めなきゃならなかったのに。」
紫耀かって俺が子供好きな事知ってるんやもんな。
紫耀に負けず劣らず、俺も子供が大好きやったから。
それでも紫耀は俺の事が好きで。
告白する前に何度も考えたけど、俺の事を諦められなかったって。
俺に子供を諦めさせなくちゃいけないかもって思いながらも告白して。
俺と付き合う事になって、子供や家庭を諦めさせたって言う引け目を紫耀はいつも感じてたんやもんな。
いつだったかそんな事を言って、紫耀は少し寂しそうに笑ってた。
「いや別に、俺かって全部諦めた訳や無いよ？」
「え？それってどういう意味？まさか･･･他の女に作って貰うとか？そんなの･･･！」
ほんま嫉妬深いんやから。
それに考えもまた飛んどるし。
「ちゃうちゃう、もう、落ち着けや。お前が言うたみたいに、養子とか方法は色々あるやろって事。」
「あ、そういう事･･･。」
俺の言葉に心底ほっとした様子で。
ほんま、阿保やなぁ。
今更俺が他の女に現を抜かすとでも思ってんやろうか。
まあ、でも、しゃあないんかな。
俺等にはこれと言った証は無いんやから。
お互いの強い気持ちだけが何にも代えられない証なんやと、紫耀はいつもそう言うけど･･･。
それでも時々･･･不安になる事はあるから･･･。
だからいつもこうやって、お互いに抱き締め合って、思ってる全部を言葉にして。
そしてまた、「ああ大丈夫だ」って。
そう思えるから･･･。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 592人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「しょうれん」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：弥勒
| 作成日時：2021年2月13日 0時
