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だって、紫耀に好きって言われた事無いし。
そんな素振りも見た事無いもん。
紫耀が俺を好きって･･･。
だって、さっきかて「女でも廉は無い」って言うてたやん。
どういう事？
ほんまに分からん分からん。
はぁっ、ちょっと落ち着いて状況考えよ。
「あ、時間･･･。」
いつまでもこのまま楽屋の前に突っ立ってられん。
物凄く入り辛いけど、此処は一つ、何も聞かなかった振りをして。
俺は覚悟を決めてドアノブを掴んだ。
「おはようございまーす。」
ドアを開けて何でも無い振りをして挨拶をすると、皆の視線が俺に集まって。
「え？何？どうしたん？」
何も知ら無い振りをして惚ける。
はい、俺は今来たばっかりですから、何にも聞いていませんでしたよ。
そんな演技をするんや。
「あ、何でも無いよ。おはよう。」
透かさず場を読むのに長けた神が挨拶を返す。
「おはよー、廉。遅かったね？」
「あー、前の仕事が中々終わらんくて。」
海人にも何でもない振りして答えて。
嘘は吐いとらんもん。
機材トラブルでちょっと時間押しててんから。
せやから皆よりもちょっと遅うなったんや。
そんでそのせいで俺は聞いてはいけないような事を聞いてもうたんやから。
どうしよう･･･大丈夫やろうか。
いつもと同じように、何も変わらんように出来てるやろうか。
「･･･あのさ、廉。もしかして聞いてた？」
「え？何を？」
海人が恐る恐る訊いて来る。
おん、ドアの前でしっかりと聞いとりましたけども。
「何やねん。何か俺に聞かれたら困るような事でも皆で話しとったん？」
全部聞いてたけど、あくまでも聞いて無い振りをして。
「そうそう廉の悪口をねー。」
悪戯っぽく神が笑う。
流石神は場を和ませるのもお手のもんやわ。
「は？何なん？皆で俺の悪口言うてたん？ダルっ。」
「ははっ、冗談だよそんなの。」
そう言って紫耀が笑う。
あれ？何か･･･普通なんやな。
さっきまで俺の事話しとったのに。
俺の前やと何でも無かったようにして。
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作者名：弥勒
| 作成日時：2021年2月13日 0時
