４ ページ34
「座ってて。」
部屋に着くと、言われるまま荷物を置いて、いつもの様にソファに座る。
そのまま暫く所在無さげに待っていると、神宮寺がコーラとコーヒーを持って、キッチンから戻ってきた。
「はい。」
「･･･ありがと。」
そのままいつもの様に、俺の隣に座ってコーヒーを飲む神宮寺。
テーブルの前には、いつも神宮寺が俺用に買っておいてくれてる、好きなメーカーのコーラが。
こんな風に、いつ来ても良いように、神宮寺は俺の好きな物を用意してくれてるんだ。
「･･･ねえ？玄樹がずっと怒ってて、俺と口利いてくれないのって･･･焼餅焼いてるから？」
「！」
暫くの沈黙後、神宮寺の言葉に、思わずビクリと身体を跳ねさせた。
･･･バレてた。
ほんとムカ付く･･･何で気付いてるの？
「だって、この前俺が、女のスタッフさんと話してた後からだよね？あんな言い方するし、ずっと怒ってるし。」
「･･･じっ、神宮寺はっ･･･皆に優しいんだもんね。俺だけじゃなくて･･･俺じゃなくても･･･。」
そうだよ、神宮寺は皆に優しいんだから。
その優しい笑顔は、皆のものだから。
俺だけのものじゃ･･･ないんだから･･･。
「あのね？玄樹。俺が特別に優しくするのは、玄樹だけだよ？俺の、可愛い恋人の玄樹だけ。」
そう言って、優しく見つめてくるその瞳には、熱が籠っていて。
その瞳を見れば、俺の心も身体も熱くなってしまう。
「･･･嘘吐き･･･俺だけじゃないくせに･･･俺なんか･･･俺、なんか･･･。」
「『俺なんか』じゃないよ？玄樹だから。他の誰でもない、玄樹だから、特別に優しくするんだよ？」
伸ばされた左手が俺の右手を握る。
「ファンやスタッフさん達に優しくするのは、皆当たり前でしょ？でも、玄樹には、それ以上に優しくしたいもん。玄樹は俺にとって、特別な人なんだから。」
「･･･特別？」
今度は優しく抱き締められる。
「だって、玄樹は俺の恋人でしょ？俺のたった一人の恋人は、それは特別に決まってるでしょ？」
ああ、やっぱり･･･。
こんな風に、神宮寺に抱き締められると安心する。
久し振りの神宮寺の体温を感じながら、俺は目を閉じた。
「ごめんね？不安にさせて。でも、ほんとに俺には玄樹だけだから。」
そう言うと、ぎゅうっときつく抱き締めてきて。
もう･･･ほんとにムカ付く。
俺が思ってる事を全部分かってて。
俺が欲しい言葉を全部言ってくれて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 593人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：弥勒
| 作成日時：2021年2月13日 0時
