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『……わたし、轟くんが好き』
モゴモゴと小さい声で俯きながら言う。
誰かの息を飲む声が聞こえて、隣から抱きつかれた。
びっくりして倒れそうになるわたしを反対側の芦戸さんが支えてくれた。
葉隠さんの謝る声もする。
「新学期始まってから鏡見めちゃくちゃ可愛くなってるよね!」
「恋する女の子は綺麗になると言いますわ!」
「えー、Aちゃんはずっと可愛いやろ?」
みんなが思い思いに意見して騒がしくなる部屋と対照的に、わたしは恥ずかしさに押し潰されそうになっている。顔が熱い。
みんなでわたしを放って、わたしと轟くんのことを話し始める。
さっさと辞めてほしい。ほんとに。
せめてわたしに聞こえないように話してほしい。
恥ずかしくておかしくなりそうだ。
「せっかくだし、もっと轟にアピールしようよ!」
突然芦戸さんがこちらを向いて、わたしの手を握った。
俯いていた顔がパッと上がる。
目の前の芦戸さんは眩しい笑顔を向けてくれていた。
『えぇ!?』
芦戸さんの手は暖かい。
梅雨ちゃんとは違う暖かさにちょっとびっくりした。
言われた言葉は更に予想外で情けない声が出てしまった。
アピールなんて言われても、何をしろっていうのさ。
非難の気持ちを込めながら芦戸さんの目を見つめる。
彼女は恋愛上級者だろうから、きっとそういう経験も豊富なんだろう。
片想い期間なんて秒で終わらせてそうだし。
「ウチらも頑張るAちゃん見たかったなぁ〜」
「毎日寮に帰ってくるのが楽しみね」
インターン組の会話が聞こえてくる。
そもそも梅雨ちゃんにすぐに泣きつけない状況で頑張らなきゃいけないのが既にめちゃくちゃつらい。
もちろんインターンに参加することを決めた梅雨ちゃんに文句なんて言う気はない。
ただ、このインターン期間は思っていたより何倍もわたしに梅雨ちゃん離れを促す機会になってしまうようだ。
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有紀(プロフ) - 瑞穂さん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!気長にお待ちくだされば幸いです◎ (2020年4月29日 22時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 続編ありがとうございます!続き楽しみにしてます!! (2020年4月26日 13時) (レス) id: e180184c40 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - かぼさん» コメントありがとうございます!続編でもよろしくお願いします◎ (2020年4月20日 22時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 続編嬉しいです!!これからも楽しみにしてます(*´∇`*) (2020年4月19日 23時) (レス) id: 5ac4123fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有紀 | 作成日時:2020年4月17日 0時