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「あんなにベタベタしてんだからキスくらいしてると思った」
「轟って手早そうだしねー」
『するわけないじゃん』
あとベタベタしてるんじゃなくてされてるだけだから。
耳郎ちゃんに言い返すとなんとも言えない顔をされた。
『そもそも先を期待して付き合ったわけじゃないし』
もう秋も終わるのだろう。
真っ赤に染まっていた木々はどんどん葉を落としていくし、文化祭用に染め直した髪ももうすっかり明るくなってしまった。
季節が変わるのにわたしが変わらないのは全然良いことではないけれど、だからって簡単に変われるものでもないし。
恋人っぽいことはしたい。
でもがっつくのも焦るのもやだ。
「じゃあ何で付き合ったの？」
耳郎ちゃんは不思議そうな顔をしてわたしを見つめていた。
奥で芦戸さんも楽しそうな顔を向けている。
文化祭で梅雨ちゃんたちと歩き回っているとき、ありがたいことに他クラスからたくさん声をかけてもらった。
わたしなんて体育祭でも職場体験でも大した成果を残していないのに。
それで、思ってしまった。
たぶん轟くんはもっとたくさんの人から声をかけられているし、その中には女の子が多くて、ただの応援や憧れ以上の感情を向ける人がいるんだろうな、って。
それがすごく嫌だった。
別にわたしは轟くんの何でもないんだけど。
『……他の女の子が、轟くんのこと好きになったらすごく嫌だなって思っちゃった』
今思えば、振られていたらなんの抑制力にもならなかったわけだけど、あの時のわたしがそこまで考え切れていたわけもなく。
まあ、結果として轟くんはわたしのだよってアピールできてるから良しとしよう。
ふたりは苦笑いしながら顔を見合わせていた。
わたしっぽくないなんてわたしがいちばん分かってるから何も言わないで。
『今は轟くんがわたしを好きでいてくれるだけで幸せなんだ』
それ以上の幸せはまだ要らない、たぶん。
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fin.
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有紀(プロフ) - 瑞穂さん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！気長にお待ちくだされば幸いです◎ (2020年4月29日 22時) (
レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 続編ありがとうございます!続き楽しみにしてます!! (2020年4月26日 13時) (レス) id: e180184c40 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - かぼさん» コメントありがとうございます！続編でもよろしくお願いします◎ (2020年4月20日 22時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 続編嬉しいです！！これからも楽しみにしてます(*´∇｀*) (2020年4月19日 23時) (レス) id: 5ac4123fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有紀 | 作成日時：2020年4月17日 0時
