後夜祭 ページ42
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後夜祭。それは文化祭を作り上げた生徒に与えられた非現実の延長。
全寮制になったことが幸いしたのか或いは毎年この規模で開催されていたのかは分からないが、会場になっている体育館の舞台では様々な催しが行われている。
有志での参加が可能なようで、あいにくわたしたちA組から出演する人はいなかったけれど、文化祭の主役と謳われた普通科やサポート科の面々が舞台を賑わせている。
体育館後方、舞台の反対側にはランチラッシュの出張食堂があって、会場内に食欲をそそる香りが広がっていた。
『轟くん』
緑谷くんたちとぼんやり舞台を眺めていた轟くんに声をかけたのは後夜祭も中盤に差し掛かった頃だった。
さっきまで梅雨ちゃん、お茶子ちゃんと一緒にステージを見ていたのだけど、やっと気持ちの整理がついたわたしはひとりでここまで来ている。
ふたりには既に何度も相談していて、行ってくるねと緊張しながら告げたわたしの背中を押してくれた。
『……ちょっと抜けない？』
後夜祭は任意参加だ。
全員が全員見なきゃいけないわけじゃないし、途中で帰っても問題ない。
そして少なくとも後夜祭がやっている間は学校が閉められることもない。
「わかった」
緑谷くんに声をかけてこちらを向く轟くん。
うるさい心臓を押さえつけるように大きく息を吸って、騒がしい体育館をふたりで抜け出した。
まだ文化祭の空気が残っている気がした。
装飾がされたままの教室を眺めながら薄暗い廊下を歩く。
「どこに向かってるんだ？」
『んー……人がいないとこ、かな』
やっぱり後夜祭に出ない人も一定数いるようで、教室から話し声が聞こえるし、生徒と廊下ですれ違うこともある。
人目につかないところに行きたいのはただただわたしの精神的な弱さによるのだけど、なかなか難しそうでもある。
明確な目的地はない。ふらふらと校舎内を歩いているだけだ。
「ならここでよくねェか」
ぐいと轟くんに手を引かれ、バランスを崩しながら使ったことのない教室に入った。
後ろ手にドアを閉める轟くんは月明かりに照らされているからかいつもよりも綺麗に見える。
いつもの教室よりも狭いような気がした。
何の教室か確認する余裕なんて、今のわたしにあるわけがないのだけど。
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有紀(プロフ) - 瑞穂さん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！気長にお待ちくだされば幸いです◎ (2020年4月29日 22時) (
レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 続編ありがとうございます!続き楽しみにしてます!! (2020年4月26日 13時) (レス) id: e180184c40 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - かぼさん» コメントありがとうございます！続編でもよろしくお願いします◎ (2020年4月20日 22時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 続編嬉しいです！！これからも楽しみにしてます(*´∇｀*) (2020年4月19日 23時) (レス) id: 5ac4123fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有紀 | 作成日時：2020年4月17日 0時
