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食堂にはほとんど生徒がいなかった。
急いでご飯を食べても予鈴には間に合わない気がする。
遅刻なんてしたら相澤先生はどんな罰を与えるか分からないし、本当にゆっくりしてる場合じゃない。
席を選ぶ時間も惜しくて、仕方なく轟くんと向かい合って座った。
『家から学校まで遠かったから髪が広がってたけど、寮生活始まったからもうアイロンしなくて大丈夫だからね』
そういえば、寮生活が始まってから雨が降ったのは初めてだ。
わたしのせいで遅刻とか、寝覚め悪すぎるからやめてほしい。
そんな気持ちを込めて食べながら轟くんに言うと、怪訝な顔をされた。
「髪が広がらねぇとお前の髪に触っちゃダメなのか？」
相変わらず表情が動かない人だ。
箸を口に入れた状態でじっと見られている。行儀が悪い。
『ただの友達はベタベタ髪に触ったりしないの』
感情の読めない目に見つめられるのはいつになっても慣れない。
分かりやすく目を逸らして箸を動かす。
観念したのか、時間が迫っていることを思い出したのか、轟くんも止まっていた箸を動かした。
「なら触れたいときはどうすればいいんだ？」
『っ！？』
とんでもない変化球をくらって飲んでいたお茶が変なとこに流れ込んだ。
げほげほと咳き込むわたしを、咄嗟に立ち上がった轟くんが心配そうに見ている。
大丈夫だと片手で制しながら、無意識に言ったであろう言葉でこんなにも狼狽えてしまう自分を恥ずかしく思う。
轟くんに他意なんてないに決まっているのだから、勝手に都合よく解釈したらダメだ。
『……そうなったら考えるよ』
残りのご飯を口に入れて会話を打ち切る。
気付いたら轟くんはもう食べ終わっていた。
待たせるのはさすがにまずい。お茶を飲み干して、ご馳走様と手を合わせた。
「今触りたい」
『遅刻するからダメ』
トレイを持って席を立つ。隙を見せたら距離を縮められそうで、なるべく急いでトレイを片付けた。
そうじゃなくても時間は迫っているのだ。
久しぶりに距離感のバグった轟くんを見たような気がする。
あるいは、そんなの気にする余裕すらなかったのか。
ぶっちゃけ今は轟くんよりも遅刻の可能性にドキドキさせられているからあんまり彼の行動が気になることはない。
結局わたしたちが最後だ。鞄を掴んで寮を出る。
雨が靴下に跳ねるのを鬱陶しく思いながら、早足で学校を目指した。
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いわゆるテコ入れというやつ。
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有紀(プロフ) - 瑞穂さん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます！気長にお待ちくだされば幸いです◎ (2020年4月29日 22時) (
レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 続編ありがとうございます!続き楽しみにしてます!! (2020年4月26日 13時) (レス) id: e180184c40 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - かぼさん» コメントありがとうございます！続編でもよろしくお願いします◎ (2020年4月20日 22時) (レス) id: a38a24a1c3 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 続編嬉しいです！！これからも楽しみにしてます(*´∇｀*) (2020年4月19日 23時) (レス) id: 5ac4123fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有紀 | 作成日時：2020年4月17日 0時
