百五十三話 ページ5
偶然…にしてはあまりに似ている。
『ねぇ、この傷…』
JK「え？ああ、珍しいでしょ？
どうやったらこんな跡残るんだろうね」
『怪我した時のこと、覚えてないの？』
こんな火傷の仕方、こっちの世界じゃしないはずだ。
JK「覚えてない」
『え？』
JK「ねぇ、これ巻いてよ」
『ああ、うん』
さらしをブンブンと振るジョングクからそれを受け取り、せっせと巻きつける。
よく考えたらこんな大きな傷痕のことを聞いちゃってデリカシーなかったかな？
だけど、ドクンドクンと脈打つ心臓はいまだ苦しいままで。
それに。
JK「ん。ありがとう」
『うん。
ねぇ、ジョングク』
JK「何？」
『なんかあった？』
JK「…え？」
なんだか様子が変だ。
月明かりに照らされる彼の瞳が、いつもより水分を含んでいる。
丸い目の中で光が揺れている。ゆらゆらと。
JK「実はさ」
『…うん』
JK「俺、今から2年前より以前のこと、何も覚えてない」
『…っ』
今度は、私が瞳を揺らす番だった。
JK「だから、この傷がどうして出来たのか覚えてないし、百済の皇子としてどう生きてきたのかもわからない。
…自分のことなのに、何も知らない。
俺から欠落してたのは…記憶だよ」
『そんな…』
JK「二年前、何も分からなくて苦しかった時に支えてくれたのが兄だった」
『…兄？』
ふと、優しい表情になったジョングクにその人が彼にとってとても大事な人間だということが伝わってくる。
JK「その兄が…、
殺されてしまうかもしれない…っ」
『…え？』
布団の中に忍ばせてあった紙を取り出し、手の中でぐしゃっと握りしめた彼の肩は少しだけ震えていた。
JK「さっき、百済の者から書簡が届いて、
そこに兄が捕らえられたと」
『…ジョングクの兄なら、その人は皇子でしょ？そんな人がどうして、』
JK「今の百済はもう、国として機能していない。
現王は乱心した。あの人は国のことなんか考えてない！
ヒョンは…、ずっと民の声を王に伝えていた…、
だから…」
疎ましくなったのだろうか。
実の、息子のことが…？
『ジョングク…、
！』
急に外が騒がしくなった。
「何故見張りの者がいない！？」
「中の者を捕らえよ！城の外で百済の人間を捕まえた！」
『！』
やっぱりさっき見えた人影は気のせいじゃなかった。
JK「A？何を、」
外の世界と中を隔てる窓の格子を蹴り破った私を見るジョングクに、窓の外を指差す。
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ろび - 夢小説で泣いたのは初めてです。こんなありふれた言葉でしか感想を言えない自分が悔しいのですが、本当に感動しました。素敵な作品をありがとうございました！ (7月6日 18時) (
レス) @page50 id: ce68512d6b (このIDを非表示/違反報告)
neon(プロフ) - 終始最高の作品でした。後半なんかもうバスタオル必須で、言葉では表せない感動がこみあげてきます。お話の中に引き込まれてしまう感覚がとても心地よくて一気に読み進めてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2023年2月26日 3時) (レス) @page49 id: db36888990 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - こんなに作り込まれてて最後の伏線回収まで素晴らしい作品でしたありがとうございました！ (2023年2月6日 2時) (レス) @page50 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃむ(プロフ) - 私の言葉で表せないくらい本当に感動するお話でした！一気読みさせていただいたのですが、ずっと涙がとまりませんでした。恋の行方だったり苦しい時代背景が相まって奥行きのある素敵なお話になっていました（ ; ; ）占ツク史上1番素敵なお話でした！！ (2023年1月1日 16時) (レス) @page50 id: ad70953f09 (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - 今まで1番読んでて面白いし止まらないし最高でした！！！ありがとうございます、、。 (2021年12月8日 3時) (レス) @page50 id: 9fa27182b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロ
| 作成日時：2020年7月12日 22時
