百六十八話 ページ20
石垣で覆われた古い地下牢。
見張りの兵は外に立っているらしく、中には誰もいない。
ぽた、ぽた、という水音だけが響いていて、その音に誘われるように地下の奥へと進んでいく。
すると、そこには一際大きな檻があった。
微かに聞こえてくる小さな息遣いに、慌てて檻へと駆け寄る。
『…ジョングク…？』
呼びかけると、ジャラッと鎖の揺れる音がした。
「…A…？」
『！
ジョングク！待ってて、今開ける！』
鍵を開けて扉に手をかけると、錆びた鉄の耳障りな音が響く。
『ジョングク！』
暗闇に目が慣れ、徐々に見えて来たジョングクの体は傷だらけで。
格子に繋がれた鎖が彼の右手右足を拘束していて、枷のついた手首からは今もぽたりぽたりと血が流れていた。
『しっかりして、すぐここから出してあげるから！』
もらった鍵をいくつも手錠に差し込むけれど、どれを当てがってもはまらなくって。
彼から流れ出る血液を見て焦りがどんどん増していく。
『どうしよう、ジョング、』
JK「落ち着け」
『…っ』
空いていた方の腕で引き寄せられ、怪我のせいか熱くなった彼の胸に沈む。
鼓動が…早い。
汗だって、すごい。
JK「大丈夫、だから」
『どこが…っ』
我慢しきれなかった涙が頬を伝う。
構わずジョングクの顔を見上げると、彼はフッと柔らかく笑った。
JK「あの時も、そんな顔してた」
『…え、』
JK「でもさ、あの時お前のこと守れなかったら俺、一生後悔してたと思う」
『…何の、話…？』
戸惑う私なんか気にもとめずに話し続けるジョングクの着物をきゅっと握る。
JK「だから、この背中の火傷は名誉の負傷」
『う…そ…、』
まさか。
『思い出したの？』
JK「うん。
そのブッサイクな泣き顔があまりに衝撃的で」
『馬鹿！
…でも、本当に？
じゃあ、私達が初めて会ったのは？』
JK「中学の部活見学の時」
『…』
JK「今俺の目の前にいるのは、キム・A。
気が強くて、男勝りで、無鉄砲で」
『…おい』
泣きながらジロっと睨むと、ジョングクはクスクス笑ってから、痛えー。と身をかがめる。
JK「でも、けっこー優しいとこもあって…、
笑顔だけは可愛く、て。
あとは…
意外と泣き虫だよね」
『…』
JK「泣かないでよ。
Aの泣き顔って妙な気分になる」
そう言っていたずらっぽく笑うジョングクに、全く彼のいう通り、信じられないくらいの涙が流れる。
やっと。
やっと、会えた。
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ろび - 夢小説で泣いたのは初めてです。こんなありふれた言葉でしか感想を言えない自分が悔しいのですが、本当に感動しました。素敵な作品をありがとうございました！ (7月6日 18時) (
レス) @page50 id: ce68512d6b (このIDを非表示/違反報告)
neon(プロフ) - 終始最高の作品でした。後半なんかもうバスタオル必須で、言葉では表せない感動がこみあげてきます。お話の中に引き込まれてしまう感覚がとても心地よくて一気に読み進めてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2023年2月26日 3時) (レス) @page49 id: db36888990 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - こんなに作り込まれてて最後の伏線回収まで素晴らしい作品でしたありがとうございました！ (2023年2月6日 2時) (レス) @page50 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃむ(プロフ) - 私の言葉で表せないくらい本当に感動するお話でした！一気読みさせていただいたのですが、ずっと涙がとまりませんでした。恋の行方だったり苦しい時代背景が相まって奥行きのある素敵なお話になっていました（ ; ; ）占ツク史上1番素敵なお話でした！！ (2023年1月1日 16時) (レス) @page50 id: ad70953f09 (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - 今まで1番読んでて面白いし止まらないし最高でした！！！ありがとうございます、、。 (2021年12月8日 3時) (レス) @page50 id: 9fa27182b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロ
| 作成日時：2020年7月12日 22時
