百六十七話 ページ19
言われるままに、ゆっくりと顔を上げると…
「…お前達の目は節穴か。小僧ではない。
この者は女人だ」
「…なんと！」
『なんと！じゃねえよ』
わざとか？ってくらいたまげた様子の兵士をぎろりと睨むと、目の前で私を品定めするように見ていた男が愉快そうに声を上げて笑った。
『…あなたが
ホソク様に教えてもらった。
百済の国の王の呼称。
私の問いかけには答えずに薄く笑ったままのその男に、返事はなくとも確信した。
『ジョングクは何処ですか？』
「私の可愛い息子のことか？」
『…知ってるんでしょう？ジョングクが…』
「替え玉だということか？皇子たちの顔など一人ひとり覚えてはいないが、突然あのような才覚を持った男が現れたら不審だろう」
なんか…
「我が手足となって働くものなら歓迎したが…残念だ。
王を謀った者に罰を与えるのは当然のこと」
いちいち、癇に障る言い方をするおっさんだな。
『殺すつもりですか？』
「いや。あいつにはまだ使い道ががある」
『…ジョングクに会わせてください』
「心配せずともお前も同じ牢行きだ」
『！』
王がそう言い終えると同時に両脇の兵に腕を引っ張り上げられる。
「ああ、そうそう。
あの替え玉、自分が本当の皇子ではないと聞き随分と驚いていたな。
おかげで簡単に捕らえることができたわけだが」
『…最低だよ、あんた』
「お前！無礼な！」
顔を真赤にした兵にガッと殴られて口の中に血の味が広がる。
痛みよりもずっと、強い怒りで頭が沸騰しそうだった。
・
「入れ」
『…』
またか。
久方ぶりの地下牢に、タイムスリップして随分グレたもんだなとため息をつく。
『ちょっと待って』
「なんだ？」
『使いみちって何？王は私達をどうするつもり？』
「知ってどうする？」
『どうせ殺されるんでしょ？そのくらい知ったっていいじゃん』
「…扶蘇山城が不穏な動きをしている。
第一皇子が動いた時のための人質にするつもりだろう」
『…そんな…』
わざとがっくりと大げさに俯き、そのままどしゃりと崩れ落ちて見せる。
まるで絶望しきっているかのように。
兵達の足音が遠ざかったのを聞き、俯かせていた顔を上げる。
立派な鉄格子の扉。
余程自信があったのか兵士は私の縄を解いていった。
大事にしまいこんでおいた鍵を取り出し、檻から手を伸ばしカチャリと鍵を開いた。
『ホソク様…ナイス！』
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ろび - 夢小説で泣いたのは初めてです。こんなありふれた言葉でしか感想を言えない自分が悔しいのですが、本当に感動しました。素敵な作品をありがとうございました！ (7月6日 18時) (
レス) @page50 id: ce68512d6b (このIDを非表示/違反報告)
neon(プロフ) - 終始最高の作品でした。後半なんかもうバスタオル必須で、言葉では表せない感動がこみあげてきます。お話の中に引き込まれてしまう感覚がとても心地よくて一気に読み進めてしまいました。素敵な作品をありがとうございます。 (2023年2月26日 3時) (レス) @page49 id: db36888990 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - こんなに作り込まれてて最後の伏線回収まで素晴らしい作品でしたありがとうございました！ (2023年2月6日 2時) (レス) @page50 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
みーちゃむ(プロフ) - 私の言葉で表せないくらい本当に感動するお話でした！一気読みさせていただいたのですが、ずっと涙がとまりませんでした。恋の行方だったり苦しい時代背景が相まって奥行きのある素敵なお話になっていました（ ; ; ）占ツク史上1番素敵なお話でした！！ (2023年1月1日 16時) (レス) @page50 id: ad70953f09 (このIDを非表示/違反報告)
hanako(プロフ) - 今まで1番読んでて面白いし止まらないし最高でした！！！ありがとうございます、、。 (2021年12月8日 3時) (レス) @page50 id: 9fa27182b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロ
| 作成日時：2020年7月12日 22時
