花が咲くその時まで ２

七十一話【SI】 ページ22

「俺が、殿(しんがり)を努めます。」
TH「汐恩…っ」

「どうか、ご無事で」


　




馬から飛び降りようとするテヒョン様を、両脇の兵らが押さえつける。

あいつら、後で怒られるだろうな。


悪いけど、そうでもしないとあの人落馬してでも止めに来るだろうから。


　


　





　









俺は、三皇子の中でテヒョン様が一番心配だった。


あの人は本当に優しい方だから、

いつか人に裏切られたり、女に騙されたりする日が来るんじゃないかって。



そしたら案の定、変な格好をしたおかしな女を連れてきたもんだから、早々に追い払ってやろうと思った。





そいつは別に、絶世の美女というわけでもなく、
だけど妙に立ち姿が凛としてて何故か目を奪われた。

それでいて化け物みたいに強くて、鼻っ柱を折られたのは俺の方だった。

悔しかったけど、悪い奴ではなくて。
人懐っこいし、よく笑うし、


何より、テヒョン様が前よりも幸せそうに笑うようになったから。



　



だから、俺はどうしてももう一度テヒョン様をあいつに会わせてやりたかった。

…テヒョン様のあの笑顔が見たかったから。



なんとかしてここを切り抜けて、もう一度。

　




　









　




TH「汐恩！」

　




悲痛そうに叫ぶテヒョン様の声が聞こえる。



俺1人でどれだけ食い止められるか分からないけれど。

少しでも時間稼ぎになればいい。

　





一人、また一人、向かってくる百済の兵を斬り捨てる。

呼吸は乱れるし、振るう剣はどんどん重くなる。

　


だけど、まだ倒れるわけにはいかない。

少しでもテヒョン様が、あいつの近くに行けるように。





そう思って…

　


　









　









『汐恩！！！』

　




そう、思ってたのに。

　







　


　




『汐恩！！』

　








　



なんで、お前がここに来るんだよ。


　









『加勢にきたーっ！！』

　



そう言って隣に並んだ姿に、馬鹿すぎてもう涙が出てくる。


お前がここに来たら、俺が命がけでテヒョン様逃した意味がなくなんだろーが、馬鹿。

言いたいことはたくさんあるのに、何も言葉にできなかった。くそ。

　






『一緒に勝とうね！』

「…おう」


　



　









ああ、でも。





　

　


やっぱり。



こいつの剣を振るう姿は、

今までに見たどこの誰よりも綺麗だ。

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