七十話【SI】 ページ21
俺達がそこについた時、戦況はすでに大分悪かった。
辿り着いた城は、ここら付近の最後の砦。
残りの城は全て百済軍に占拠されてしまっていた。
「テヒョン様。
ここが落ちるのも時間の問題です。
退却の準備を。
…テヒョン様?」
城主はとっくにここを離れた。
残っているのはシン将軍と、テヒョン様だけ。
付き添える兵もそう多くはない。
何度も城中に入ろうと、もういっそ国へ戻ろうと進言したけれど、この人は戦場から動こうとしなかった。
少しずつ減っていく新羅の…いや、この戦場にいる兵達全てを思って心を痛め、
そして、その痛みから逃げようとしない。
じっと戦場を見つめ、目を逸らそうとしないその横顔を見ながら、もっとうまく立ち回ってくださればいいのにと思う。
「この世の痛み全部請け負うつもりですか?」
TH「…汐恩は変なことを言うね。」
そんな風に、力なく笑わないで欲しい。
そうじゃなくて、俺が見たいのは…
SN「テヒョン皇子。」
シン将軍が俺たちを呼びにきた頃には、城中に火の手が回っていた。
百済軍の包囲からなんとか脱出し、後を追ってくる兵達の視界を奪うために森の中へ入る。
逃げる途中でシン将軍の部隊とテヒョン様率いる部隊とで二手に分かれた。
将軍の首と皇子の首、どちらも百済兵からしたら眉唾物だろう。
特に、キム・シン将軍は、新羅の中では最も名高い将軍。
うまく敵兵を分散させられると思っていた。
だけど、
「テヒョン様は、百済兵にも人気らしいです。」
TH「勘弁して欲しいよ。」
明らかにこちら側を追ってきた兵の方が多い。
見たところ三、四十騎。
対してこちらテヒョン様を合わせて十数騎。
さて、どうしようか。
TH「このまま逃げても切りがないね。
迎え撃とうか。」
「…それよりも、俺にいい考えがあります。」
不思議そうに俺を見つめるテヒョン様に笑いかけ、馬の速度を落とし、味方の兵に合図してテヒョン様の両脇を固める。
TH「…汐恩。
どういうつもり…?」
「すみません、でもこれが最善です。」
TH「だめだ、許さない…っ」
俺を振り返るテヒョン様は、今まで見たことがないくらい怒った顔をしていた。
思い返しても見れば、この人に叱られたことなんて、今までに一度もなかったな。
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ミロ(プロフ) - 1ちゃんさん» やったー!とっても嬉しいです!(*^^*)続きも更新頑張りますね!もう少しで公開できます!遅くなり申し訳ないです…!! (2020年6月16日 12時) (レス) id: 4091476ef1 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - あとさん» わぁ!それはすごく嬉しいご報告です!(*^^*)こちらこそ今までもお世話になっています!!世界観が好きと言ってもらえてとても安心しています。これからも仲良くしていただけるとうれしいです!コメントありがとうございました!(*^^*) (2020年6月16日 12時) (レス) id: 4091476ef1 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - よしほさん» 嬉しいです!続き頑張りますね!(*^^*)(返信してしまいました…!) (2020年6月16日 12時) (レス) id: 4091476ef1 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - てじそく.さん» てじそくさん…なんて嬉しいお言葉をくださるのですか!!( ; ; )本当に読んでいただきとても幸せです!これからも頑張ろうと思えます!!そうやって読んでもらえる話をこれからも増やせるように、頑張っていきますね!(*^▽^*) (2020年6月16日 12時) (レス) id: 4091476ef1 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - Caramelさん» ドラマ化!テンション上がっちゃいました(*^^*)そうなんですよー!通勤電車とかわりと本当に倒れそうになります(`・ω・´)caramelさんもお体気をつけてくださいね!(*´∀`*) (2020年6月16日 12時) (レス) id: 4091476ef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2020年5月15日 23時