三度目の ページ27
YG「わかった。」
『！
ありがとう。
私、頑張るから。』
会場ではユンギ君の曲の紹介のアナウンスが始まっている。
紹介が終わると、客席から拍手が聞こえ…これが、入場の合図。
深呼吸をして、一歩、踏み出そうとした瞬間だった。
『わっ、』
ぐいっと後ろから腕を引っ張られ、次の瞬間、背中に温かさを感じ、驚いて振り向くと…
『っ！
ユン、』
YG「ごめん」
気がついたら、舞台袖に崩れ落ちるようにしてしゃがみこんだまま、舞台中央に置かれるグランドピアノまで向かうユンギ君の後ろ姿を見つめていた。
一瞬、ほんの一瞬だけ頬に感じた感触を、確かめるように手のひらで押さえる。
…バカ。
ユンギ君の、バカ。
私が動けなくなるってわかってて、こんな事したの？
…ひどいじゃないか。
君の狙い通り、驚いて、止めることもできなかった。
『なんで…っ』
本当に、おバカ。
作曲者が演奏者になることは認められてないの、知ってるでしょ？
ねぇ…。
彼の入場に、審査員たちはざわついていたけれど、有無を言わさず始まったユンギ君の演奏に、一気に客席は静まり返った。
初めてこの曲を聞いた時、本当は少し驚いた。
彼は今まで、どこか胸が切なくなるような、そんな音楽を好んで作っていたから。
強くて、でも繊細で、たまに感じる弱さに、中毒になってしまうんだ。
それはまるで、彼自身のようで。
今回のコンクールのテーマは【恋】。
【眠り姫】と彼が名付けたこの曲は、ただひたすらに、温かさを感じる音楽だった。
曲作りは、自分の経験を元にするとよく聞くけれど、
だとすればユンギ君は、こんなにも胸が暖かくなるような恋をしたのだろうか。
それなら、彼にこんな風に思われる【その人】は、なんて幸せなんだろう。
初めて聞いた時と同じように、涙が溢れそうになったけれど、
今この瞬間は、ユンギ君から目を逸らしたくなくて、必死に我慢した。
演奏が終わった後、
ホッとしたように俯いたユンギ君。
その頬から一筋流れた涙を、
きっと、誰も気づかなかっただろうそれを、
私だけは、絶対に忘れてはいけないと思った。
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Liz(プロフ) - 突然失礼します！！ミロさんのマシンヌンキム家が本当に大好きです。もう何度読み直したか分かりません。読む度に大好きが増していきます。いつか、また新たなマシンヌンキム家が読めたらとっっても嬉しいです。改めて、読んで幸せになれる作品をありがとうございます！ (2023年3月30日 17時) (
レス) @page50 id: d1d28ca630 (このIDを非表示/違反報告)
サラ - ミロさん、はじめまして。初めてコメントさせて頂きます！私はミロさんの『マシンヌン』が大好きで、公開されてからずっとずっと読み続け、何回いや何百回と読んでます！その度に癒され涙し感動し笑い癒されてます。また帰ってきたマシンヌンあったら嬉しいです！ (2022年10月30日 14時) (レス) @page50 id: bdc30337aa (このIDを非表示/違反報告)
たきゆ(プロフ) - ミロさーん 何回読んでも涙がでてしまうではないですか!良かった 良かった！これからもずっとファンです〜 (2022年10月28日 3時) (レス) @page50 id: 088e3725a7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し83058号(プロフ) - まだ、続きが見たいです🥺お気に入りなので、終わってほしくないです… (2022年10月26日 3時) (レス) @page50 id: 2732bc1be1 (このIDを非表示/違反報告)
クサズのエクボにハマりたい(プロフ) - ずっと読み返したかったので嬉しいです (2022年10月19日 8時) (レス) @page50 id: d78d833968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロ
| 作成日時：2020年2月23日 21時
