マジックタイム ページ10
春になったとはいえ、日が落ちる時間はまだ早くって。
夕方になると少しだけ肌寒い。
隣を歩く彼がぷるっと震えた。
『テヒョン君、ブレザーは？』
TH「教室に忘れちゃった」
『あ、それ取りに行くのが用事？』
ちがうよって笑ったテヒョン君が、っくしょんってくしゃみして、ずびっと鼻を鳴らす。
セーターの裾を伸ばして、顔を隠して照れくさそうに笑う彼の金髪が、西の空に少しだけ残ったオレンジ色に照らされてきらきらと光ってハッとする。
『マジックタイムだ！』
TH「え？」
『来て！』
時間がない！
不思議そうに首を傾げた彼の手を取り、校舎に向かって走る。
階段をかけ上がり屋上の扉を開けると、淡い光が目に差し込む。
夜の夕闇と夕焼けとが混ざり合う時間。
カメラを構えて、何回かシャッターを切る。
プレビュー画面を確認していると、隣から覗きこむテヒョン君の存在に気が付き、あれなんでここにいるんだろうって一瞬驚いた後、自分で連れてきてしまったことを思い出した。
TH「空が撮りたかったの？」
『うん。
マジックタイムって知ってる？』
TH「マジックタイム？」
『夕方のあとで夜の前の今みたい時のことを言うんだけどね、マジックタイムは写真がすごく綺麗に撮れるんだよ』
TH「…見せて」
私からカメラを受け取り、画面を見つめるテヒョン君。
俯いて、カメラに落とされた視線。まつ毛長いなぁ。
首から下げたままのカメラを触られるのってなんか変な感じだ。
手持ち無沙汰でスカートのひだをぴらぴらといじる。
TH「俺、この写真すき」
『どれー？』
横から画面を覗き込むと、映し出されていたのは確か去年の冬に撮った、体育倉庫からぶらさがる無数のつららの写真。
『えーっ、いつの間にそんな遡ったのー？』
TH「ひひ。Aあんまし、データ整理しないんだね」
『うん。めんどくさくって』
いつの間にか呼び方変わってる。
TH「あとねー、このへんもすき」
屋上に置き去りにされた教室の椅子、
間違って花壇の外に咲いてしまった花、
家主のいなくなったツバメの巣。
優しい瞳でそれらを見つめるテヒョン君に、心がぽかぽかと暖かくなっていく。
『ほんと！？』
TH「うん、本当。
Aも好きでしょ？」
…なんでわかったんだろう。
『私ね、人を撮るのも好きだけど、本当は風景とか、物を撮るのが好きなの！』
でも、人を撮るほうがうまいって言われるのさ。
逆に物を撮るのは下手なんだって！
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ミロ(プロフ) - ぺんぎんみなり。さん» ありがとうございます！少しずつ進めていってるので早くこちらにも載せられるように頑張りますね！(o^^o)嬉しいお言葉をありがとうございます！(TT) (2020年9月26日 22時) (
レス) id: ffc43d4874 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんぎんみなり。(プロフ) - colorful、たくさんの展開にドキドキしながら読ませてもらってますっ！Twitterをやっていないので、完結して、こちらでも読めるようになるように待ってます！ミロさんのペースでゆっくり頑張ってください。 (2020年9月13日 7時) (レス) id: 0f0b607e0f (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - hirotdmさん» 優しくて暖かいお言葉をありがとうございます。2章必ず完結させてここに持ってきますので、少しお待ちいただけると嬉しいです。頑張ります。本当にありがとうございます！！ (2020年9月10日 15時) (レス) id: b1cdd73458 (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます！！(＞＜)2章も頑張りますので、宜しくお願いします！(o^^o) (2020年9月10日 15時) (レス) id: b1cdd73458 (このIDを非表示/違反報告)
hirotdm(プロフ) - 楽しいお話をありがとうございました。ミロ様の作品は最高に面白くてどんどん引き込まれていきました。更新をこちらでお待ちしてます。楽しみにしているので必ず帰って来てくださいね！暫くのお別れは寂しいですが我慢して大人しく待ってます。 (2020年9月9日 15時) (レス) id: 55697896ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミロ
| 作成日時：2020年8月20日 22時
