2話 ページ2
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一体全体、なにがどうなってこうなったのか。
『…っ、離してっ!!』
「やだ。」
私の上に覆いかぶさる見知らぬ男。
強く私の腕を握るその男の手を振り払おうと、力一杯もがいているのだけどびくともしない。
『ちょ、なんなのよあんた!!!』
怖くて怖くて涙が出る。
やだ、私このまま殺されちゃったりするのかな?
『ひっ!!
な、なに!?』
私の頰を流れる涙をじっと見つめていた男は、あろうことかその涙を追うように唇を寄せてきた。
「なかないで…。
俺のことおぼえてないの?」
『覚えてないわよあんたなんか!!』
そう叫んだ私に男は悲しそうに顔を歪ませると、ゆっくりと私から体を離す。
「これ。
ほんとうにおぼえてない?」
『え…?』
私の目の前に差し出された彼の腕には包帯が巻かれていた。
もしかして村の人?
こんな患者いたっけ?
もう一度、じーーーっと私のことを見つめる男のことをよく見てみるけれど、こんなに顔が整った男ならさすがに覚えているはず。
『あなたみたいな患者は覚えてないよ。』
「うそ。
だって、森で…」
『森?』
確かに今日、私は森に入った。
そこで足を怪我していた子に包帯を巻いてあげたけれど。
だけど、違うでしょう?
『森で手当てをしたのは、
あなたじゃなくて、猫だよ。』
それはそれは立派な虎猫だった。
「うん。」
『いや、だからあなたのことは知らないの。』
「しらなくないよ。
だって、
おれが、その猫だもん。」
『…は?』
いひひ、と人懐っこく笑うその男を見て、一瞬気が遠くなる。
拝啓、親愛なるお婆ちゃん。
偉大なお医者様だったあなたに憧れてこの村にやってきましたが、
どうやら私、早速とんでもない患者と出会ってしまったようです。
「ちなみに、猫じゃなくて、
虎。ね?」
『…。』
さぁ。
どうしようか?
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つきこ(プロフ) - テヒョンのソロアルバム聴きながら読みました😭せつないけど最高のお話でした✨ (11月12日 20時) (レス) @page27 id: 449ba1617b (このIDを非表示/違反報告)
あいし(プロフ) - あかん。ほんまに泣ける😿 (2023年1月27日 15時) (レス) @page27 id: 6ccfb19ab8 (このIDを非表示/違反報告)
murasaki5027(プロフ) - 番外編、続編希望です!! (2022年5月26日 18時) (レス) @page26 id: 1f714ed38e (このIDを非表示/違反報告)
わたし。(プロフ) - このテヒョン、妄想ですがドタイプです!!!! (2021年4月22日 0時) (レス) id: 373e34b3f9 (このIDを非表示/違反報告)
ジョングガ - ミロさんの物語ほんとにLOVEすぎて困る、どの作品見てもいいわぁってなるし最高!面白かったりする話でも最後は泣ける話だったりして毎回楽しませてもらってます。本当に小説化して欲しいくらい笑これからも頑張ってください (2020年11月8日 1時) (レス) id: c6fa5ac741 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2019年10月14日 20時