ヲタクに恋して (ページ36)

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「はー。もうちょっと化粧とかしようかな。」

散々笑われた後の帰り道。

いままでの怠惰を少し反省する。

確かに、化粧は日焼け止め塗って、リップクリームを塗って終わり。でもリップクリームは色付きにしてるんだよ！？
髪の毛はいつもどーせ１つに束ねるからと、櫛を通すこともない。

まあまあ終わってる。

でもそんな時間があるならすこしでも長く寝たいんだよなー。

ぶつぶつと言い訳を考えていると、大事なものがないことに気がつく。

「あれ、携帯がない。」

カバンの中にも、ポケットの中にも、どこにもない。

「あのときか！！」

みんなに写真を見せている時だ！
あのままリビングに忘れてきたんだ！！

はー。最悪だ！

一瞬そのまま帰ろうか迷ったけれど、一人暮らしだし、何かあったら困ると思い、猛ダッシュで元来た道を戻っていった。

「ゼェ…ハァ…ハァ…おじゃま、します。」

息も整えないまま家に入る。

シーンと静まり返った廊下。
みんなそれぞれ自分の時間を過ごしているようだ。

少しだけホッとして、そのままリビングを目指す。
このまま携帯とって、何事もなかったかのようにして去ろう。
そう思い、なるべく足音を立てないように廊下を進み、リビングのドアに手をかける。

と、

「……。」

部屋の中から気配を感じた。

別に隠れることなんて何もないけど、気づかれないようにそっとドアを開き、中の様子を覗いてみる。

はーー。

気配の正体は、一番出くわしたくない男・ジョングクさんだった。

ソファーの前に突っ立って、手の中にある何かをじっと見ている。

なに見てるんだろう？

好奇心から、少し身を乗り出したのが間違いだった。

「あ。」

ゴトッ

あちらも人の気配に気づいたのか、思いっきり目が合ってしまった。

JK「…何してんの？」

「あー、えっと忘れ物をしてしまってですね…。」

ん？
それより何か物が落ちた音がしたけど、気になって音の出所を確認すると、

落ちていたのは私の探し物だった。

「え、なんで？」

拾おうとすると、慌てて私の携帯を拾い上げたジョングクさん。

きっと彼は知られたくなかったんだと思う。

さっきまで自分か何を見ていたのか。

だけど、ごめんなさい、見えてしまった。

暗い部屋の中、わたしのiPhoneの画面には、先ほどユイ姉ちゃんと撮った写真が表示されていた。