【w.r.w.r.d.！】白い軍服の彼。【r.n】 (ページ10)

今日:9 hit、昨日:1 hit、合計:38,249 hit

9話　～After　１　year～ページ10

彼が戦場へ行って１年が経った。
白尾帝国との戦争はかなり長期化していたのだが、１週間前、我々国が勝利したという知らせが流れてきた。

「A、今日の分の鉱石。これで足りる？」

「うん、足りる！ありがと、紫音」

「いつものことでしょ」

紫音が私の製造部屋に鉱石をどさっと置く。

実は数か月前、紫音から唐突な告白を受けた。
しかし私は彼のことを忘れることができず、お断りしていた。

忘れることが出来ずというか…

私は彼が帰ってくることを信じている。そう信じている限り、私は彼のことを好きでいつづけると決めたのだ。

「さて、今日も店じまい、しますか」

店頭に並んでいた武器を製造部屋に運ぶ。
最近は武器を買うというより、修理しに来る兵士が多いため、新品はなかなか売れない。

全て武器を運び終わり、手ぶらのまま製造部屋へと向かう。

────── コツン。

一瞬、店内から懐かしい音が聞こえた気がした。

「…え？」

私は足を止める。

そして音のした店内の方へ足を向けた。

そこにいたのは。

「曹長ひとらんらん、ただいま戻った」

白い軍服の…彼。

「ひと…らんらん様っ…！！！」

「A、約束通り…生きて帰ってきたぞ」

一年ぶりに見た彼の笑顔。私は彼の元に駆け寄った。

「絶対…生きて帰ってくるって信じてました…！」

「Aが心を込めて造ってくれたこの刀のおかげで、俺は生きて帰れた…。

いや、それだけではない…」

「…え？」

彼の手が頬に触れ、そのままそっと撫でた。

「…いつの間にか、俺の中でAの存在が生きる意味になっていた…

Aに会いたいという気持ちが、俺を生かしてくれたんだ」

「ひと…ら…ん…さま…？」

頬をほんのり染めている彼。

私の頬から手を離すと、軍帽のつばに手をかけ、顔を隠すように深くかぶった。

「その…これからも…俺の支えになってくれないだろうか…？」

「…！」

商人が崇高な軍人に恋をしちゃいけないなんて、そんなことはない。

逆もまた然り。

【好き】という気持ちがあれば、

互いの存在が大事なのであれば、

生きる意味になっているのであれば。

恋は【自由】なのだ。