2222-60 ページ13
「親父に変なこと言われてねえか」
エレベーター内での彼の第一声はそれだった。やっぱり親子仲はよろしくないのね。
「言われてないよ。寧ろ威厳があって格好良かった」
そう言うとバツが悪そうに轟君は俯いたのだった。
彼がどんな理由で父を嫌うのか知らないけれど、職場体験でわざわざ選んだってことはきっと良い傾向なのだと思う。余計なお世話だろうけど、少しでもわだかまりが解けるといいな。
「それにしてもどこ行くのかな」
白々しくそんな事を呟く。
「これからわかるだろ」
そう言われては何も言えない。「そっか」とだけ返事して、エレベーターで近づく地面を見続けた。
「来たか」
エンデヴァーはもう到着していたようで、私達を見るなり周りの人にこう言った。
「前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる」
うん、そうだね。良い勘してる。
「しばし保須に出張し活動する！ 市に連絡しろぉ！！」
うんうん、良い判断。結果彼はヒーロー殺しを捕えているし、さすがNo.2。優秀な判断力だ。ちらっと隣を見ると、轟君は心なしか驚いていた。
ふむ……エンデヴァーの仕事っぷりを見るのが初めてなのかな。そんな反応だ。そこまで嫌いだったのか。本当、何があったんだろう。
こちらの視線に気付いたのか、轟君がハッとした表情をした。
「エンデヴァーさんは指示の途中だし、数分待機かな」
「ああ……らしいな」
妙な空気を誤魔化す為に思ってもないことを言う。
「……飯田君と会えたりするかな」
いや、会うことになるんだけど。ここまで全くの予定調和なわけだし。
「飯田か……」
珍しく轟君が会話の中で表情を変えた。飯田君に何か思うところがあるのだろうか。2人はそんなに仲が良かったかな。
男子にはなったことが無いからそこら辺の友情の機微はわからないな。触れないでおこう。
「行くぞ！」
「はい！」
エンデヴァーの声に反射的に返事をする。轟君はしていないけど。
さあ、有意義な職場体験になるといいけど。……いや、するけれど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1284人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りっぴい(プロフ) - 作品全部読ませて頂きました！質問なのですが、この作品のように字や背景を変えるようにするにはどうすればいいのでしょうか。 (2018年4月7日 0時) (
レス) id: 72a6f55e69 (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 冷やしチョコさん» 個性が好評のようで嬉しく思います。文才は……大変恐縮です。更新頑張ります！ (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - ログインしたくない病さん» 評価だけでなくコメントまでしていただけて私はとても嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 牙夢さん» 今回は更新じゃなくて申し訳ありません。続編もお楽しみいただけるように努めたいと思います。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
冷やしチョコ - 文才があるってこういう事なんだな…としみじみ思います。個性のアイディアが面白いし、何より小説の内容が面白いです。更新楽しみに待ってます！ (2017年8月29日 0時) (レス) id: 691aea1734 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月13日 3時
