2222-20 ページ22
講評を聞いて、教室へ戻る。一先ず今日の授業が終わった。
講評ではまあ、チームワークについてアドバイスされた。肝には命じておこう。
荷物を纏めて下校の準備を整え、教室を出た。
「喩語」
階段へ差し掛かったところで後ろから名前を呼ばれ、反射的に振り返ると目に入ったのは独特な配色の髪色。轟君が立っていた。
「ああ、轟君。今日はお疲れ」
「お前の個性、何なんだ？」
轟君まで皆と同じこと聞くのね。まあ、仕方がないか。適当に誤魔化したいところだけど、そうだなー……そうもさせてくれそうにない雰囲気だ。
「……轟君、人に言えないことある？」
「は……？」
「例えば、その火傷のこととか」
「何のつもりだ」
「そういう轟君の秘密、教えてくれたら良いこと教えてあげるよ」
私がそう言うと口を噤んだようだった。うんうん、入学2日目に、仲良くもない生徒にそんな重大なこと話さないよね。普通は。
「ね？ 言いたくないでしょ。それと同じだよ」
それじゃまた明日
それだけ告げて帰路についた。我ながら上手く躱せたのではなかろうか。
＊
見たことのない個性だった。
目を閉じて人の居場所を感知するのはまだわかる。
ただ、あんな一瞬で建物ごと造りを変えたり、触れただけで物体を完全に消す個性なんて知らなかった。
勿論、この世界には数え切れないほどの個性が存在していて、自分がその全容を把握していることなどないのだが、それにしても喩語のような個性は不思議だった。
複合型にしては特殊すぎる。
戦闘訓練後に聞こうと思ったが、講評をもらう部屋まで行く途中の喩語は様子がおかしかった。
勝ったはずなのにニコリともせず、それどころか鬼気迫るような形相だった。おまけに拳は握ったまま、ぶるぶると震えている。
戦闘訓練が始まる前と直後の、どこか抜けた雰囲気が嘘のようだった。
その為、その時は話しかけることを断念。
帰り際に個性について聞いたが、今度は上手くはぐらかされた。よりにもよって、自分の傷痕を利用されるとは。
あいつにとって個性の詳細とは、それほどまでに重大なことなのか。この火傷をダシにされたことには腹を立てそうになるが、彼女にとって個性についてがそれほど重要ならば、今は突かない方がいいのだろう。
そう考えろと言わんばかりの目つきで、それは同い年とは思えない程の威圧を含んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1498人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nasamakuo48(プロフ) - はじめまして。とても面白い作品で一気に読んでしまいました。こんな感じで感想等を投稿するのが始めてなので、ど書けば良いのかわからず申し訳ありません。これからも、無理のないペースで新しい作品やストーリーの続きを拝見させていただくのを楽しみにしています。 (2017年9月27日 18時) (
レス) id: 6cec3e37ea (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 紫原 舞雪 @ペアネ中 兎化さん» コメントありがとうございます。フォントは、春夏秋冬PBBをTAKAYA様よりお借りしております。 (2017年8月11日 18時) (レス) id: aa9f0c2ea2 (このIDを非表示/違反報告)
紫原 舞雪 @ペアネ中 兎化(プロフ) - とても面白くて素敵な作品ですね！これからも投稿頑張って下さい！ 質問なんですが、この作品の文字のフォントは何を使っているんですか？教えて頂けると幸いです。 (2017年8月11日 13時) (レス) id: 4dbed81eb1 (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞稀さん» 個性の描写が表現できているようで嬉しいです。ありがとうございます！ (2017年8月6日 18時) (レス) id: 8c5fbde7f2 (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - かさかさスライムさん» ありがとうございます……恐れ多いです……！頑張りますね。 (2017年8月6日 18時) (レス) id: 8c5fbde7f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：廿楽
| 作成日時：2017年7月31日 1時
