episode28 ページ31
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「ねぇ、A。
このあり得ない暑さの時期に、わざわざ社内大会をやる必要性がどこにあるのかを100字以内で教えてちょうだい。しかもソフトボールよ?信じられない、冗談じゃないわ。」
心底ご立腹の凛子は私の隣で愚痴をこぼしているが、私は着々と準備運動を進めていく。
ソフトボールなんて聞いたら、私の若かりし青春時代の血が騒ぐ。
なんて言ったって、高校時代ソフトボール部に所属していたんだから。
これはガチンコ勝負でいくしかないじゃない!
『さぁ!いざ出陣よ!!』
「あんたはいいわね、楽しそうで。』
十分すぎるやる気の私を冷ややかな眼差しで見ている凛子。
こうして毎年9月には社内大会が開かれる。今年は学生時代私が愛してやまなかったソフトボール。
事前にチーム分けがなされていて、私と凛子は偶然にも同じチームになることができた。
中には経理部の黒木部長や三銃士の1人、今市隆二さんもいる。
まぁ、取り巻くお姉さま方が多すぎて話す隙なんてないのだろうけれど...。
「よろしくね!同じチームだよね?」
ふと目線を上げてみると、今日も異様な色気を纏った彼、今市隆二が立っていた。
『「えっ、はい!よろしくお願いします。」』
急すぎる出来事に頭から煙を出す私たち。
あの固い取り巻きからどうやって逃げてきたのだろうか、実に不思議。
横を見てみると、瞳の奥をハートにした凛子。颯爽と去っていく彼の後ろ姿に、しっかりと目を奪われていた。
いつも冷静沈着で、一目惚れなんてめったにしない凛子にしては珍しすぎる。
『なに、恋でも始めちゃった?』
そう言って揶揄うと
「ばっかじゃないの?」
と、足早に歩いて行ってしまった。
これ以上言うと地球の裏まで吹っ飛ばされるので、この辺で手を打つことにする。
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作者名:さえ | 作成日時:2019年5月26日 10時