episode30 ページ33
.
.
.
自分の分からないものについて、想像で話をするのは思っているよりも難しい。
それを私は自分の人生をもって痛感している。
私は”色”似ついて話が及ぶと、極度に構えてしまう。そしてその時は決まって、唇をかんでいると凛子が言っていた。
気付かないうちに唇から血がにじんでいる時があるのはそのせいだと、彼女の話を耳にしてから自覚した。
『あっ、えっと。いい色です...よね?
白と赤の。』
登坂さんは素っ頓狂な声を上げた。
「え。今、革ボールの話してなかった?笑
白に赤ってそれ、野球だろ?大丈夫かよ...」
完全にやってしまった。
その場の気まずさから涙がこぼれそうになっているとそこに、救世主現る。
「何の話ですか〜?ん?ん?」
さすがすぎるタイミングの凛子。きっと私の唇に気付いてくれたのだろう。
「いや、今ソフトの革ボールの話してたんだけど、白と赤っていうから...」苦笑いを溢しながら彼は言う。
「あー、そういう事ですか!
ちょっとこの子天然なところあるんですよ〜。いつもはしっかりしてるんですけどね?
えーっと、黄色と赤ですよね?
Aの家で見たことあります!!」
本当に助かった。
凛子のフォローには毎度頭が上がらない。
「そっか。」
そう呟いて、登坂さんは何事もなかったように歩いて行った。
『ありがとう、また助けられちゃった。』
「なーに言ってんのよ。気にすることじゃないでしょ?私とAの仲じゃない!」
そんなことを言いながらいつも笑い飛ばしてくれる。
本当にいい同僚をもったものだと思う。
72人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さえ | 作成日時:2019年5月26日 10時