恋愛ベクトル【Mizuki I】

ページ８ * Hidaka ページ8

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別れた、___今も好きな女のコと一緒に帰る。


中学三年生、周りにからかわれて気まずくなって別れたんだっけ。


周りの声なんて、気にしなければよかったのに、多感な時期だったあの頃は、俺も、Aもそれが嫌で。




「寄り道しない？」


『しない』




スパン、と切られる。


しない、って返されるって分かってたけど！


わざと歩幅を狭めて、ゆっくり歩くのは、もう少し長く一緒にいたいから、なのにAは全然気づきやしない。




『もう！飛貴歩くの遅い！』


「……だって疲れたんだもん」




じゃあ、尚更寄り道なんてしてられないじゃん！と言いくるめられて、Aの歩くスピードが少し緩められた。




『……まあ、なんもないし、ゆっくり帰っていいか』


「ありがとう！A大好き！」


『はいはい』




分かりにくい優しさも、ツンデレなところも、まだ……ずっと、大好きなのに、


俺の恋愛ベクトルが今も自分に向いてるなんてちっとも思ってないんだろうなぁ。


てかそもそもベクトル自体理解してないんだろうけどね。




「あれ、A？」


『瑞稀先生？』




するりと解かれる左手。


俺たちを見て “ 瑞稀先生 ” が一瞬表情を歪ませた。




「今は先生じゃなくて、瑞稀くんでいいよ？」


『瑞稀…くん、今日だいぶ宿題進んだよ』


「偉いじゃん、追加しようか？」


『いい！大丈夫！』




二人だけの世界、俺一人取り残されたようだ。




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