第29話 ページ29
扉が開かれると同時に、ビシッと姿勢を正した。
お「どうかしました？」
貴「あ、えっと」
頬を指でポリポリとかき、目をそらした。
お「…とりあえず上がってください」
にへらっと笑うおついちさんにつられるように、顔が綻んだ。
前にコトンと飲み物が置かれた。
お「はい」
貴「ありがとうございます」
お「で、何かあったんですか？」
貴「…この前の、返事を」
おついちさんの顔が少しこわばった気がした。
貴「彼氏とは別れました」
お「大丈夫でした…？」
貴「はい」
今の気持ち、そのまま言うんだ。
貴「今の私には恋とかそういうのが分かりません。
だからおついちさんに対する感情も、よく分かりません」
でも、と言葉を続けた。
貴「おついちさんのことは好きです。
恋愛としてとか友達としてとか関係なく好きなんです。
こんな中途半端な気持ちであなたと付き合うのは申し訳ない…です…」
おついちさんは顔を下に向けたが、笑顔で顔を上げた。
お「Aさんの本心が聞けて嬉しいです。
変なことで悩ませてしまって、すみません」
貴「……」
笑ってる…
お「あのことは忘れてください。
ほんと、気にしなくていいんで」
突然目の前が滲み、ボタボタと涙が落ちた。
お「えぇ！？」
貴「そ、そんなこと言わないでくださいよぉ！
私すごく嬉しかったんですよ！？
そりゃびっくりはしましたけど、告白ってすごく勇気いるし！」
おついちさんがぱちくりと目を見開いた。
貴「私ずっと考えてたんです！
おついちさんと付き合えたらとっても楽しいだろうなって！
でも中途半端な気持ちで付き合うのはおついちさんに申し訳ないし、そもそも私自身が許しません！
お付き合いするなら、ちゃんと好きになってからじゃないと嫌なんです！」
お「Aさん…」
貴「…でも、おついちさんにはちゃんと幸せになって欲しい…
だからおついちさんは新しい誰かを…見つけてください」
するとおついちさんは首を左右に振った。
お「俺ってねちっこい人なんです。
1度好きになったらなかなか忘れられなくて、諦めきれないんです」
だから、せめて好きでいさせてください。
その言葉を聞いて、心臓が大きく打った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2018年3月13日 0時
