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第10話 ページ11

《瑠璃月A》


貴「とりあえずこんなもんかしら」


紙に書いてある品物を全て買い終えた。

このままアジトに戻るのももったいないし、少し見てまわろう。


坂を下ると、たくさんの人であふれていた。


貴「この街は相変わらず人が多いのね」


近くのパン屋でパンを買った。

ボス、喜ぶかしら。


ふふ、と笑った、その時。


「…ひっく…えぐ…」


ぬいぐるみを抱えて泣く、小さな女の子を見つけた。


捨て子…にしては外見が綺麗だ。

まさか迷子…?

ごめんね、子供は苦手なのよ…


少し痛む心を押さえながら、前を通り過ぎようとした。





貴「うっ」


ドレスの裾を掴まれてしまった。

私は大きくため息を吐き、女の子の目線を合わせるようにしゃがんだ。


貴「どうしたの?」

「パパが、いない、の」

貴「はぐれちゃったのね。
申し訳ないけど、私忙しいから…」

「やら、いかないで…」


涙でベタベタの手で、手首を掴まれた。


貴「あ〜…」

「おねーちゃ、いっしょにいて…」

貴「わかった、わかったから泣き止むのをやめてちょうだい」


こんなとこ、仲間の誰かに見られたら笑いものよ…


貴「名前は?」

「みーしゃ」

貴「ミーシャ?
大層な名前ね」

「おねーちゃんは?」

貴「名乗るほどの名前じゃないわ」

「えー?
じゃあ、おひめさま!」

貴「はぁ?」


女の子は途端に目をキラキラと輝かせた。


「おねーちゃん、みちゃのすきなほんのおひめさまににてるの!
ふわふわのかみのけに、くろいドレスをきてるの!」


こーやっておどってるの!と、自分のワンピースの裾を掴み、くるくると回った。


「だから、おねーちゃんのなまえは、おひめさま!」

貴「はいはい」

「はいはいっかい!」

貴「どこで覚えたのよそんなの…」

「みどりのおにーちゃんがよくいってるの!
あおのおにーちゃんと、あかのおにーちゃんに!」


みどりの…おにーちゃん…

まさか、いちくん?

なわけないか。


「ねぇねぇ、おひめさまはどうしてドレスをきてるの?
もしかして、これからぶどうかい?」


子供の無垢な目って恐ろしいわ。


貴「…どうしてかしらね」

「わからないの?」

貴「えぇ」

「じゃあ、みちゃもおひめさまのドレスきたら、おひめさまみたいになれる?」


私は目を細めた。


貴「私みたいには…ならない方がいいわ」

「でもみちゃ…」

貴「あなたは、あなたのなりたいようになった方がいい」

「おひめさま…」

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作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2018年2月28日 18時

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