第8夜 ページ8
ー三好一成ー
貴「私には、忘れられない人がいるんだ」
祠の前の石階段に戻り、2人でかき氷を食べていると、Aちゃんが口を開いた。
貴「男の子なんだけどね、小さい頃ずっと一緒にいてくれて、私のことを妹みたいに優しくしてくれた子がいるの」
一「へぇ〜」
ズッキンと胸の痛みを我慢しながら聞いていた。
貴「けれどすぐ私は引っ越しちゃって、その男の子とは絶縁状態になっちゃったの」
一「名前とか覚えてないの?」
貴「うろ覚えでね。
けれど私が呼んでた名前は覚えてるよ」
一「それって何?」
貴「カズくん」
Aちゃんが寝てる時つぶやいた名前…
一「それ俺と同じじゃん!」
貴「だから初め聞いた時びっくりしたの。
もしかして三好くんがカズくんなんじゃないかって」
けれどAちゃんは顔を曇らせた。
貴「私の中のカズくんは、ぼやけてて幽霊みたいな存在なの。
どうしても思い出せない…」
一「そっか…」
貴「けど、ずっと夢だった女優さんになって、ここに戻ってくることが出来たからカズくんを探そうと思ってるんだ」
一「いいじゃんいいじゃん!
なんかそういうのマンガみたいで最高!」
貴「でしょ?」
カズくん、か。
そのカズくんがみつかったら、Aちゃんはどうするんだろう。
一「ところで、そのカズくんって子は好きだったの?」
貴「…そうだなぁ…
多分好きだったから、忘れられないんだろうね」
好きだったから忘れられない。
それもそうだよね。
そのカズくんが、俺ならいいのに。
貴「今はカズくんよりこの無限ループから抜け出すことが重要だよ!
同じこと繰り返されたら、気が狂っちゃう!」
一「そうだね」
いいや、終わらないで。
このままずっとAちゃんといたいよ。
夏祭りが終わったら、もう会えないかもしれない。
貴「…また、時間か戻ってるよ」
一「ほんとだ。
多分0時になる瞬間に夜8時に戻されるんだね」
貴「けど、なんでこんな不思議なことが起こるんだろう」
一「何か大切なことを伝えたい、とか?」
貴「三好くん漫画の読みすぎ!」
ほんと、むっくんの漫画読みすぎたかも。
今の俺、女々しすぎるよ。
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作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2017年8月10日 16時