【A3!】だらりと垂れた、充電コード (ページ21)

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21ボルトページ21

紬「ごめんなさい…
俺がAさんを気遣えなかったばかりに…」

貴「いえ！謝らないでください！
私の方こそ、離れてしまってごめんなさい」

紬さんはやんわりと微笑んだ。

紬「屋台でなにか買って、神社で休憩しましょうか」

私達は屋台でたませんと人形焼きを買って神社の石階段を登った。

頂上に着くと、手持ち花火をする少女と老夫婦が休憩していた。

貴「あそこのベンチに座りましょうか」

ベンチに座ると、お祭りの風景が一望できた。

貴「綺麗ですね」

紬「そうですね」

…あれ、この風景どこかで…

気のせい…？

紬「Aさんって、監督とどれ位の付き合いなんですか？」

貴「え？あ、え～っと、中学2年の時から仲がいいので、結構な付き合いです」

紬「結構長いんですね。
出会いとか聞いてもいいですか？」

貴「…引かないでくださいね」

私は下をうつむいたまま話した。

貴「実は私、小学生の時からいじめられてたんです」

紬「え？」

貴「それで中二の時にいづみに助けてもらったんです」

紬「いじめられていたんですか…？」

貴「…私には祖父母も親も、苗字もありませんから」

紬「…え？」

貴「私は施設で育ったんです。
母はすぐ、産まれたばかりの私を施設の前に捨てたので」

紬「そんな…」

今どき珍しい、苗字のない施設の子。

そのせいで同級生の男子からよくからかわれた。

貴「学校では偽性を使ってました。
今もバイトに使ってる苗字は偽性です」

こんなこと、いづみ以外誰にも話したことなかった。

話すと周りの人達が引いて、私から離れていくかもしれないと思い言えなかった。

だけど紬さんには、なんの躊躇いもなく言えた。

貴「こんな重い話をしても、いづみは嫌な顔すらしなかったんです。
逆に泣いてくれました。
それを見て、この子なら信用してもいいかもしれないって思ったんです。
それで、今に至ります。」

チラッと紬さんの方を見ると、どう答えていいか分からないような顔をしていた。

貴「けど今は全く気にしてませんよ！
むしろ他の人とは違うって思えて、ワクワクするんです」

苗字がなんだ、施設育ちだからなんだ

私はお前らと同じ学校の児童だ。

そう言って男子を片っ端からぶん殴った。

けど、そのイジメは中学まで続いた。

あ、だから怪力なのかな。