【A3!】だらりと垂れた、充電コード (ページ20)

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20ボルトページ20

やばい、かなりやばい

人は少ないものの、明かりがあまり無い。

そのためか、カップルがあちらこちらにいる。

早く戻らなきゃ

そう思って来た道を戻ろうとした、その時

「A？」

貴「え」

聞き慣れた、嫌な声がした。

「やっぱりAだ。
浴衣だから分かんなかったよ」

貴「…そう」

声をかけてきたのは、浮気されて別れた元カレ。

「久しぶりだね」

貴「そうだね」

「1人？」

貴「なわけ」

「だよな。
俺ダチと来てんだけど、迷ってさ～」

変わらない子供みたいな笑顔。

私はこれに惚れた。

貴「私も迷子」

「まじ？奇遇じゃん」

聞きたいとはたくさんあったが、こいつと話してると不快なので去りたかった。

「つか浴衣初めて見た…
マジ可愛い…」

貴「ありがと」

すると彼は真剣な顔になり、私の目を見た。

「あのさ、もう一度俺と付き合ってくれん？」

貴「…は？」

「あの女とはもう別れた。
Aと別れてから、寂しくて仕方ないんだ」

私は呆れた。

なんだよ、結局戻ってくるのかよ。

寂しい？

それはお前の欲求が満たされてなくて、私で満たしたいだけだろ。

貴「悪いけど、お前と付き合うなんてありえない。
じゃあね」

「待てよ…！」

ガシッ、と腕を掴まれ、ゾワッ！と鳥肌がたった。

貴「やだ離してよ！」

「話を聞いてくれ！」

貴「あんたの話なんか聞きたくない！
都合のいいように女を振り回さないで！」

「振り回してない！
なぁ、お願いだから！」

思いっきり振り払おうと拳を握った。

紬「A！」

貴「…！」

紬さんが私の体を抱き、彼の手を手の甲で払った。

紬「あなたは誰ですか？
俺の彼女に何してるんですか？」

ドックンと心臓が跳ねた。

「Aの、彼氏？」

紬「そうですけど」

紬さんの顔は真剣で、少し怖かった。

紬「まさか変なことをしようとしたんですか？
人の彼女に？」

「ま、まさかそんな…！」

紬「何も無いならどこか行ってください。
目障りですから」

彼は私を見て、ゆっくり去っていった。

紬「大丈夫ですか？！
怪我は？！何かされてませんか？！」

貴「大丈夫です…」

紬「よかった…」

さっきの顔とは打って変わって、優しいいつもの紬さんに戻っていた。

紬「さっきの人は知り合いですか？」

貴「…元カレです」

紬「そうだったんですか…」

どうして私は罪悪感を感じているのだろうか。