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第16話 ページ16

ー皇天馬ー


幸「…姉さんは、ずっと頑張ってきたんだ」


幸はベレー帽を握りしめ、顔を下に向けながら言った。


幸「小5の時、学校の運動場で追いかけっこしてたら突然倒れて運ばれてった。
病名は分かんないけど、心臓が悪いんだって」

天「……」

幸「時々呼吸が止まったり、体が動かなくなったりするって言われた」


俺はただ黙って聞いていた。


幸「姉さんが倒れるまで喧嘩とかすごくしてたし、蹴りあったりもしてた。
それが出来なくなるって思うと、なんか悲しくて…
俺が姉さんを守らなきゃって思った」


スッ、と顔を上げた幸の目から、静かに涙が流れた。


幸「姉さんが喜ぶこと全てやって、全力で守った。
俺の趣味も服装も、全部姉さんの影響」


幸は、幸なりに必死だったんだ…


幸「でも、いつ心臓止まってもおかしくないって、もうそれ死ぬってことでしょ…?」


声を振り絞るように、涙混じりに訴えた。


幸「死んで欲しくない、もっと姉さんといたいのに…
俺が…姉さんの体ならよかったのに…」

天「幸、それは違う」

幸「何が違うってのさ!」


ガタン、とパイプ椅子を倒して立ち上がった。

幸は泣きながら怒号を浴びせた。


幸「姉さんは何も悪くない!
それなのに苦しいことや辛いことは姉さんばっかりだ!」

天「落ち着け、幸」

幸「落ち着いてられるわけないでしょ!?
姉さんは…姉さんは…!」

天「幸!」


俺は幸の胸ぐらを掴んだ。


天「だったらもし幸がAの病気を患ってたら、ほんとにAは幸せに暮らせると思ってんのか!
お前以上に苦しくて辛い思いするに決まってんだろ!」

幸「…なんでわかんのさ」

天「Aが姉だからだ」

幸「…」

天「姉や兄ってのは、産まれた時から下の事を見てきてんだよ。
お前の覚えてる以上に、Aは幸を見てんだよ」


手を離し、少し息を吐いた。


天「俺は赤の他人だし、兄弟とかいねぇから分かんねぇけど、Aにとってお前は大切な存在なんだと思う」

幸「…ポンコツの癖に偉そうな名言残して、恥ずかしい…」

天「は、はぁ!?
お前ほんとに生意気だな!?」

幸「うるさい」


そう言う幸の表情は、柔らかくなっていた。

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華ヶ崎レオ(プロフ) - みこはんさん» ありがとうございます!とっっっても嬉しいです!初めはこんな結末じゃなかったので、大丈夫かなと心配でしたがそう言っていただけて安心しました!(*´-`*) (2017年8月1日 0時) (レス) id: a8b7c32919 (このIDを非表示/違反報告)
みこはん(プロフ) - 何回見ても泣けます(´;ω;`)たった36話でここまで中身の濃い小説はなかなか見ないので凄いと思いました!次の作品も楽しみにしてます。 (2017年8月1日 0時) (レス) id: af3c32f75f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2017年7月17日 22時

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