第22話 言葉巧みな蛸 ページ22
アズ「ようこそ、オクタヴィネル寮へ」
貴「こんにちは」
アズ「立ち話はなんですから、僕の部屋へ案内しますね」
アズール先輩の部屋へ案内され、大きなソファーに向かい合った。
アズ「それで、お話というのは」
貴「昨日のお話、お受け致します」
アズ「それは良かった」
彼はニッコリ笑ってどこからともなく契約書を取り出した。
アズ「こちらは契約書です。
シフト制ですが、基本月水金土の4日間をお願いしたいです。
お時間はディナータイムなので18時頃ですかね。
お給与はこんな感じで、まかないも出ます」
なるほど、割と良心的だ。
労働は人生で初めてだけど、ピアノの演奏だものね。
アズ「そしてここが重要です。
ピアノの演奏は18時から1時間ですが、それ以降はウェイターとして働いてもらいます」
貴「…ん？」
アズ「何か？」
貴「え、ウェイター、ですか？」
アズ「専属演奏者とは言いましたけど、オンリーとは一言も言ってませんよ」
聞いておりませんわ！！
アズ「僕達も人手が欲しくて困ってたんです。
Aさんが来てくださると大変助かるのですが」
貴「んん」
アズ「別に無理にとは言いません。
ただ、あなたもお困りなのでしょう？」
ポンポン、と自分のポケットを叩く彼。
金銭面で困ってるのはお見通しのようだ。
アズ「僕らは従業員が欲しい、あなたはお金が欲しい。
win-winじゃありませんか」
貴「そう、ですけど」
アズ「それに他と比べてかなり良心的な契約内容だと思いますが…」
貴「…分かりました」
私は契約書に自分の名前をサインした。
アズ「契約成立ですね」
アズール先輩は契約書を大切に懐にしまって、「明日、モストロラウンジでお待ちしております」と微笑んだ。
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作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2023年3月10日 22時
