第14話 ページ14
貴「おやすみグリちゃん」
グリ「ん〜…」
パチン、と電気を切り、グリちゃんの寝息を確認してからベッドを出た。
机の上のランプに火をつけ、か細い火の中再度教科書とノートを広げる。
魔法が使えない以上、それ以外で後れを取る訳にはいかない。
勉強面だけでもしっかりしなきゃ。
知らない単語や聞いた事のない植物、薬品、材料。
覚えることが０からどころかマイナススタートだ。
時間を割いてクルーウェル先生にも聞きに行ったり、実際に触ったりしないと覚えられない。
この世界にまだいたいから。
だから努力する。
気がつけば日付を超え、眠気が飛んでしまった。
貴「………」
私はランプの日を吹き消し、音を立てないようストールを巻いて部屋を出た。
外は真っ暗で街灯も無い。
抜け道を抜けると月明かりに照らされた美しい海が出迎えてくれた。
貴「…いい香り」
海は好き。
あまり行った記憶はないけど、自由の象徴のような感じがするから好き。
貴「少し気分転換してから戻ろう…」
近くにあった流木に腰を掛け、ボーッと海を見つめた。
フロ「小エビちゃん」
振り返るとラフな格好をしたフロイドさんがニコッと笑った。
フロ「やっぱり来てたんだ。
てか今度は女じゃねーしー」
貴「少しでも外に出るならブローチはしておこうって決めたんです」
フロ「別にいーじゃん今くらい」
貴「誰が見てるか分かりませんからね。
フロイドさんもこんな夜中にどうしたんですか？」
フロ「眠れないんだよね」
貴「僕も同じです」
浜辺は風が強く、少し肌寒い。
ストールだけじゃ足りなかったかな。
フロ「寒いの？」
貴「少しだけ」
フロ「ならこれ着れば？」
隣に座るフロイドさんは自分の着ていた上着を私に差し出した。
フロ「俺平気だし、小エビちゃん弱いから風邪ひくよ」
私は軽くお礼を言って上着を肩にかけた。
心臓がドキドキと強めに鼓動しだすのがわかる。
男性にこんなことされたの生まれて初めてですわ…
フロ「ねぇ、ブローチ取っていい？」
貴「な、ダメです」
フロ「なんで」
貴「さっきも言いました」
フロ「いーじゃん。
絶対見えないようにするから」
貴「お断りします」
フロ「なら返して」
貴「意地悪」
ドキドキが治まらなくて、気を抜いたら顔が熱くなりそう…
距離もこんなに近いのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2023年3月10日 22時
