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#9 ページ9

寮に戻ってからも、先生に塗ってもらった紅を落とせずにいた。


「まだ落とさないの?」

「…落とせないの」


私の心を掴んで離さない赤色。

欲しくて欲しくてたまらない。


「そんなに気に入ったんだ」

「リゼは落としたの?」

「もったいなかったけど、ただのリップでしょ?
しかもこういうのならすぐ作れそうだし」


私は手鏡で自分の唇を見て、何十回目かのため息を漏らした。

見かねた友人はおもむろに杖を取りだし、


「キーペスト」


と杖を振った。

たちまち私の唇から紅が剥がれ、サラサラと消えていった。


「な、なんてことするの!?
返してよ!!」

「ちょちょ、落ち着いて!
突然こんなことして申し訳ないけど、ほんとに落ち着いて!」


リターン、と私の唇を杖で軽く叩くと紅が元に戻った。


「こんなことするなんて…」

「ごめんって。
でもこの魔法なら紅を落とさなくても良くなるよ?」

「そうだけど」

「でもさ、私思うんだけどそういう物って消えるからこそ価値が出るんじゃない?」


杖で自分の頭を軽く叩きながら笑った。

その笑顔は柔らかく、どこか説得力もあった。


「人間界で買おう?紅」

「…うん」


私は名残惜しいが、紅を落とした。

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作者名:華ヶ崎レオ | 作成日時:2022年6月20日 1時

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