第10話 ページ10
ジョゼフの部屋を出て、そのまま自分の部屋に戻った。
一人部屋なのでやけに広く感じる。
貴「……」
引き出しから招待状を取り出し、もう一度中を見た。
ここは死後の世界。
私は死んでいるというのに、痛みもあるし血も出る。
涙だって変わらず流れる。
貴「…死後の世界ならば、お母様にも会えると思ったのに」
お母様のことを考えると無意識に涙が落ちる。
ダメだ、ジョゼフ以外の人間に泣き顔を見せる訳には…
でも、ナワーブさんに見つかってしまった…
指で涙を拭き、招待状をしまった。
寂しい。
1人は辛い。
もう一度ジョゼフの所に行こうか…
そう思って部屋の扉を開けると、どこからか甘い匂いがした。
貴「何かしら」
匂いを辿るとキッチンにたどり着いた。
中からは数人の女子の声がする。
貴「何作ってるの？」
後ろから声をかけると、彼女たちは笑って答えてくれた。
エマ「ケーキを作ってるの！」
貴「ケーキ！」
エミ「Aさんもいかが？」
貴「ぜひ！
けど黙って見てるのも申し訳ないから、私にも手伝わせて！」
腕を捲り、手を洗った。
マ「じゃあ、生クリームを作るのを手伝って」
貴「任せて」
カシュカシュと生クリームを混ぜるが、なかなか難しい。
貴「時間がかかるわね」
トレ「ならこれ使えば？」
貴「それは？」
トレ「電動ミキサー。
ほら、こうやって自動で混ぜてくれるから楽なんだよ」
貴「すごい…
現代の技術は計り知れないわね！」
トレ「機械、知らないの？」
貴「私は随分と昔の人間だから…
それに、料理はあまりしたことないの」
エマ「そっか、王女様だから」
貴「そうだけど、ここでは騎士よ。
だから、いろいろと教えてね」
エマ「うん！」
私はエマさんの頬に着いた生クリームを指で拭い、ペロッと舐めた。
貴「あら、しょっぱい」
マ「え！？
あ、間違えてる！！」
貴「作り直しね」
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作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2019年4月7日 19時
