第21話 ページ21
今日はあいにくの雨。
雨が降ると決まって思い出すのがお母様。
お母様は雨の日、私を膝に乗せて編み物を教えてくれたり、お歌を教えてくれたり、とにかく二人きりの時間を作ってくれていた。
けど、お母様は戦場で火矢に心臓を射抜かれて死んだ。
それっきり大好きだった雨の日は、私にとって地獄に変わってしまった。
貴「…大人になってみると、雨ってほんとは良いものだったのね」
窓に触れると、外気と雨の水でキンキンに冷えていた。
貴「お母様、私は今とても不安定になっています。
どうか、お言葉を…私に…」
なんて言っても聞こえな
ー「…A…」ー
貴「え？」
突然誰かに名前を呼ばれた。
いや、この声、間違いない…
貴「お、お母様…？」
ー「A…」ー
貴「お母様？お母様なの？」
ー「A…こっちへ…」ー
私は部屋を飛び出し、館を走った。
ー「A…A…」ー
お母様が…お母様が呼んでる…！
行かなきゃ、行かなきゃ！！
貴「お母様！待ってお母様！」
土砂降りの中外へ出て、あたりを見回した。
貴「…お母様ー！」
ー「こちらへ…こちらへ…」ー
貴「お母様…」
声に導かれるように門を掴んだ。
門は意図も簡単に開いてしまった。
貴「…この先に、お母様が」
やっぱりいるんだ…
この世界にお母様はいるんだわ！！
貴「お母様！今行くわ！」
館の外へ足を踏み入れようとした、その時
グッ！と腕が引っ張られ、誰かの体の上に倒れ込んだ。
貴「い、た…」
ギギ、と門が閉まる。
貴「ま、待って！」
手を伸ばしたが、門は完全に閉じてしまった。
お母様…
伸ばした手を握ると、顔が誰かによってグリン！と回転させられた。
ナ「お前何してんだよ！！」
貴「ナ、ナワーブさん！？」
そうか、彼が私を
ナ「こっから出たらどうなるかわかってんのか！？
俺がお前のことみつけなけりゃ、一生さ迷い続けてたんだぞ！」
貴「さ、さ迷う…？」
ナ「ここから向こうは無だ！
何も無い、何も聞こえない、何も感じない世界なんだ！」
貴「でも、お母様の声が」
ナ「目を覚ませ！」
ギュッとほっぺを抓られた。
とても痛かった。
貴「…お母様…」
痛みと寂しさで涙が流れた。
私はナワーブさんの胸に飛び込み、声を上げて泣いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2019年4月7日 19時
