第15話 ページ15
ーAー
1人が嫌な私は基本、ジョゼフの部屋にいる。
今日もまたジョゼフの部屋で紅茶を飲んでいた。
ジョ「にしても、さっきのAかっこよかったよ」
貴「え？あぁ、推理の時の…」
ジョ「Aが団長に任命された理由も分かる気がする」
カチャンとティーカップを置き、大きく鼻から息を吐いた。
貴「お母様みたいだった？」
ジョ「え？」
貴「お母様みたいな、勇敢で強い人みたいだった？」
ジョ「…A？」
貴「ジョゼフ、ここは死者の国よね」
ジョ「んえ？うん、そうだけど…」
貴「なら、お母様もどこかにいるはず」
胸の前でギュッと拳を固め、眉間にシワを寄せた。
ジョ「それは…分からない…」
貴「なぜ？」
ジョ「僕らがこの館から出ることは禁止されてる。
だから、分からない」
貴「…そう」
するとジョゼフは私の肩に手を着き、真剣な顔で言った。
ジョ「A、外に出ようなんて考えちゃダメだよ。
館の門の外に出れば、何が起こるか分からない」
貴「何故わかるの？」
ジョ「…僕も1度出ようとしたことがあってね。
門の外に足を1歩出した瞬間、正気を吸い取られるような感覚に襲われて、そのあとの記憶が無いんだ」
貴「今も？」
ジョ「今も」
私は自分の足を抱え、顔を埋めた。
貴「ジョゼフ、私お母様に会いたい。
1人は寂しい」
ジョ「A…」
貴「ジョゼフがいてくれて心強いわよ。
だけど、お母様が恋しくて恋しくて仕方ないの。
もう一度お母様の焼いたシフォンケーキを食べながら、優しい声で眠りたい」
ギュッと自分の腕を握った。
爪がくい込んで痛い。
ワンピースが涙で濡れる。
貴「はは、もう、馬鹿なのはジョゼフじゃなくて私の方ね」
顔を上げて涙を拭うと、ジョゼフは優しく頭を撫でてくれた。
ジョ「僕はいつでもAを見守ってるから。
お母さんの代わりにはなれないけど、そばにはいる」
貴「…ありがとう」
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作者名：華ヶ崎レオ
| 作成日時：2019年4月7日 19時
