検索窓
今日:3 hit、昨日:34 hit、合計:4,788 hit

第2章-7 ページ17

固まったまま必死に念を送ると、その子供は私から目を離してのそりと起き上がり、またふらふら歩き回り始めた。
 ほっとしたのもつかの間。

「!」

 今度は――ヨーヨーを避けてスタスタ歩いていた奴が2人、私の方を見ていた。  
 オレンジと青の色違いのツナギを着た、私と同じくらいの年の女の子と男の子。ヨーヨーのイベントの主催側?
 てっきり『奴ら』には視力がないと思っていたけど、ヨーヨーを器用に避けて歩いている。 
 そいつらは『静かに』とでも言うように口に人差し指を当てながら、にやにやと笑いつつ、私のほうに一歩一歩、近づいてくる。

 ――近づいてくる。

「えっ!?」

 あ。
 声、出しちゃった。
 後悔先に立たず。
 その瞬間、凄まじい雄叫びが森に響き渡った。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「ひっ」

 奴らが声のする方――つまり私を見た。
 100以上の瞳が私を凝視する。
 ひゅっ、と再度喉が鳴った。
 固まって動かない私を見て、ツナギの二人組が眉をひそめて走り出した――その瞬間に私も金縛りが解け、一目散に駆け出した。
 全力疾走。
 陸上の大会ぶりの――いやそれ以上の、文字通り命を懸けた爆走。

(走れ!)
(走れ私!)

 こうなってくると手に持つ金属バットが邪魔だが、捨てるわけにもいかない。それに、うしろからは、じゃらじゃらじゃら――と。
 砂利を蹴る音がする。
 うしろを確認したい。
 けど、そんなことできない。
 何かに気を取られて転べば――それは則ち死!
 どこにいたのか、森の中からうじゃうじゃ奴らが出てくる。
 私の足音を聞きつけてやってきている。

「もう……やだ……っ!」

 逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて。
 走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って、走って。

 気づけば最奥のスポセン前。
 玄関が開いていた。
 隙間からするりと中に入り、扉を閉め、鍵も閉めようとする。
 学校と同じタイプ。扉の側面にあるバーを下げれば鍵が閉まる。
 でも――手が震えて、上手く動かせない。
 遠くにはツナギの2人と、そのまた奥に奴らが近づいてきているのが見える。

「ああもう……!」

第2章-8→←第2章-6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (8 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:天王() , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:めいろ | 作成日時:2019年12月16日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。