【天王()】表裏一体な毎日【短編集】

【獣道】白い部屋�� ページ24

「白い部屋、好きですか？」

　平日の昼下がり。突然通りすがりの不審な女にそんなことを聞かれたとき、反応の仕方は複数あると思う。

1、はいと答える。
2、何それと聞き返す。
3、嫌いと答える。
4、無視する。
5、うるさい消えろと喧嘩を売る。
6、実力行使。

　宗教勧誘か何かか？普段なら5番か6番を選ぶだろうし、そして第二天王()に真っ先に止められるんだろうけど、運良く…もしくは運悪く、私は今一人。あてもなくぶらぶら散歩をしていたところで、お腹が空いて目眩もしていた。ぶらぶら歩く――というよりは、ふらふら彷徨う、の方が客観的に見て正しかったかもしれない。善悪の区別がつけられなさそうな状態の人間、また精神的に弱そうな人間に『そういう輩』は好んで声をかける。『彼ら』にとって今の私がそれだったのだろう。失礼な。私はそもそも人間じゃあないというのに。え？そこじゃない？
　まぁ、それを見破られてたら6番しか選ぶ余地がないんだけど。即刻抹殺さようなら。
　だけど、天王()の中でも一番良識がある私は、一人の時までそんな無茶な選択はしない。無難に4番を選び、女を無視してそのまま歩き続けた。
　大体真っ白い布で顔まですっぽり覆って、口紅だけ真っ赤で…ってそんな絵に描いたような不審な女、相手にする奴なんている？ハロウィンはもう終わりましたけど？
　普通ならそこで終わるだろうに、というか次のターゲットを探し始めるだろうに、あろうことか女は静かに私のあとをついてきた。一歩後ろを歩き続け、時折思い出したように「白い部屋、好きですか？」と聞いてくる。他の売り文句はないのか、と言い返したい。そんなんじゃ顧客ゲットできませんよ？あなた何考えてるんですか？GM、心理ロール振っていいですか？いや、その前に『隠れる』で振っていいですか？
　……あ。
　『白い部屋』？
　『目が覚めたら、あなた方は見覚えのない部屋にいました』ってやつ？
　確かにあれは、たいていの場合白い部屋だ。それか、無機質で冷たいアスファルトの部屋。そして必ずと言っていいほど扉か机が目に入って、メモは裏まで見るのが常識。
　それが好きかどうかってこと？
　ええ…好きでも嫌いでもないんだけど。てかこれ、『はい』って答えたら確実に連れて行かれるやつでは？ロストせずに帰ってくる自信はないんですけど…。
　私はちらり、と女を盗み見る。

白い部屋�□�←モノクロ前日譚��

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