【天王()】表裏一体な毎日【短編集】

第一次まとも戦争�� ページ14

「そもそも俺らは裏方なんだよ。ドンパチやるのは仕事のときだけにしてくれ。面倒臭い」

「…ごめんなさい」

　悲しい四重奏が、紙が風で舞うフロアに響く。心なしか吉田とめいろの肩が震えている。それは反省かーーそれとも薄着が影響しているのか。

「片付けは君たちでやってね」

「…はい」

「明日には例の組織を壊滅させるからね」

「はい」

「うりさんの怪我は今日中に治してね」

「はい！」

「今日盗ってきたデータもすぐに共有すること」

「はい！！！」

　項垂れたまま何度も頷く4人。
　鵺は4人をしばらく見つめていたが、ため息をついた後「うん」と頷き全開のままの窓に向かって歩き出した。

「じゃ、帰るから」

　言うなり窓の桟に足を乗せる。窓の外はいつの間にか三日月がきらめいており、翼がその光を浴びてまたまばゆく光る。だがそれを見ている者は誰もいない。

「はい！……え？」

　4人は下を向いたまま同じように頷くーー頷いたところで影の動きを感じ、揃って顔を上げた。窓に目を向けるも、既に鵺は飛び立ったあと。姿を消す術も身につけているのか、4人が窓に駆け寄るもその姿も羽も何一つとして見えない。

「落ちた…？いや、飛んでっ…た…？」

　ぼんやりと呟く吉田。その隣で目を輝かせるめいろ。

「ぬえさんは本当に鵺だったんだ…！ああもう本当に可愛い。可愛いの権化。可愛いの擬人化。可愛い世界選手権優勝」

「おい、そんなこと言ってないで早く片付けるぞ」

　後ろから栗花落の声が聞こえ、吉田とめいろは振り向いた。栗花落とじのが既に窓から離れ、神妙な顔で机を起こし始めている。

「はぁい」

　気の抜けた声で返事をするめいろ。きょろきょろと周りを見回し始める。吉田も足元に散らばる紙類を次々と拾っていった。

「確かにくだらなかったな…被害が大きい」

「うん…パーテーションは全部買い替えだね…」とじのが応える。

「はあ…何やってんだか」

「戦争は何も生まないって、はっきり分かんだね。うりさんにも謝らなきゃ…」

「まあまあ二人とも、気づけただけいいじゃない」とめいろ。どこかから持って来た箒とちりとりを手に、硝子の破片を集めている。

「大事なのは繰り返さないこと、覚え続けていること」と続ける彼女。
　栗花落も「そうだな」と頷いた。「とっとと片付けて、明日はターゲット全滅させるぞ」

「吉田さんも栗さんも、明日は打ち合わせ通り頼むよ」とじの。

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