104.お祝いと小さな箱 ページ31
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拓海の家までにあるコンビニに立ち寄ってお酒だけ買うんだろうと思っていたら
「どれがいい？」なんて私に聞いてきたのはデザートの売り場で。
拓海「お祝いだからケーキがいいかな。」
A「……お祝い？なんの？」
拓海「ん？あれ？覚えてない？」
A「………………わかんない。」
拓海「女の子のほうが覚えてるもんだと思ってたけどなー。ま、いっか。帰ったら教えるけど、思い出せたら思い出してみて。」
A「う、うん…」
これにしよ！って、拓海が選んだのはシンプルなイチゴのショートケーキ。
ちょうどよく2個入りになっているそれと缶ビールやチューハイなんかを一緒にしてレジに向かった。
お祝い……お祝い？
お互いの誕生日でもないしイベント事がある日でもない。
なんてことはない、普通の日だ。
拓海の家まで歩いてる間も
久しぶりに来た家にいる今も全く思い出せないままだった。
拓海「………その調子だとホントに思い出せてないな(笑)」
A「ごめん……考えたけどわかんなくて。なんだったっけ？」
拓海「記念日なんだけどな。俺とAの。」
A「………記念日？」
二宮さん家みたいな大きなダイニングテーブルじゃなくて
小さなローテーブルの上に並べられたケーキとお酒。
いつもは面倒臭がって缶のまま飲んじゃうビールも
今日はちょっとお洒落なグラスに注がれている。
拓海「………乾杯(笑)」
A「か、乾杯……ね、なに？笑ってないで教えてよ。」
拓海「ん？ホントにわかんないの？」
思い出せなくて乾杯したビールも飲めずにグラスを握りしめたままの私に
ちょっとショックかもー！って笑う拓海。
ごめん、って謝る私に
クスクス笑いながら仕方ねぇなぁって話し始めた。
拓海「んーとね……今日は俺がAに好きだって言って、付き合いはじめた日。」
A「…………うそ……」
拓海「ホント。で、これ。」
コトン、と置かれた小さな箱。
グラスを持ったままの手がなかなか伸ばせないでいると
早く開けてみてって拓海が催促する。
その箱の意味がわからない訳じゃない。
多分そうなんじゃないかって思うものが
そっと開けた箱の中でキラリと光り輝いていた。
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作者名：みおり
| 作成日時：2014年7月22日 17時
