103.責められない ページ30
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拓海「よかった、わりとすぐ見つかった(笑)」
A「そんなに近くにいたの？」
拓海「ああ、会社の先輩後輩と飲んでた。ほら、そんなとこ座ってないで行こ。」
A「うん…。」
なんの迷いもなく繋がれた手。
私の手をまるっと包んじゃう拓海の大きな手のひら。
包まれると心がほわんとあったかくなる手のひらがいつもは嬉しくて仕方ないのに
……今日はじわりと冷や汗が出そう。
拓海「うちでちょっと飲み直そっか。」
A「う、うん……」
拓海「コンビニに寄ってなんか買ってこ。」
夜も遅いのに街の中は人で溢れていて
私と拓海みたいなカップルが楽しそうに笑って歩いている。
付き合いはじめの頃は私もあんな風に笑ってたのかな。
腕を組んで、肩を抱いて
信号待ちでたまにキスをして微笑み合って。
ひと目も憚らずイチャつく目の前のカップルに釘付けになっていたら
それに気づいた拓海が
「A見過ぎ(笑)」って手のひらで目を覆ってきた。
A「だって…目の前にいたら見ちゃうもんじゃない？///」
拓海「久しぶりに、俺らもしちゃう？」
A「え？」
拓海「路チュー。」
目を覆っていた手のひらが頬に添えられて
見上げたらすぐに拓海の顔が傾きながら近づいてきた。
A「………ん……っ///」
恥ずかしくて胸を叩いて抗議すると
フフって笑う拓海が一度離れた唇をおでこにくっつけてきた。
A「……恥ずかしい！///」
拓海「まだまだ若い奴らにも見せつけてやらねば(笑)」
A「…………///」
拓海「ほら、信号変わった。行こう。」
繋いだ手を解いて肩を抱いて歩き出した拓海。
指先で唇をなぞると思い出すのは
二宮さんとのキス。
今、拓海が触れたばかりなのに、より鮮明に思い出される感触。
恋人とキスをして、肩を抱かれて歩いてるのに
考えてることは他の男の人のことだなんて……
私………拓海のことを責められない。
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作者名：みおり
| 作成日時：2014年7月22日 17時
