物語の終着点、その先は・・・ ページ25
・
横浜の街に落ちることなく、海に沈んだ鯨。
真っ赤な夕日に照らされるその背は何処か寂しげだ。
「落ちた鯨、か」
「・・・約束通り、いつか君に見せてやろう。本物の鯨をな」
「楽しみにしています」
メルヴィルと並び、白鯨の様子を眺める。
後ろには無事に生還した泉鏡花に抱擁する敦。
そして、太宰に詰め寄る芥川。
あ、気絶した。
・・・連れて帰るの私なんだけどな。
部下に任せよう。
「奈津」
「太宰ですか。随分派手な計画を立てたものですね」
「知っていて乗った君に云われたくないな・・・ほら、後ろ向いて」
そう云った太宰の手には、私が敦に持たせた端末と共に渡した赤い結紐。
ずっと昔、私たちがまだ幼かった頃。
太宰から私への贈り物。
「役に立ったでしょ?」
私が彼に託したのは、マフィアとの交渉に使えると思ったからだ。
「ああ、大いにね。あの時の森さんの顔、君にも見せたかった」
「それは如何いう」
「あの人も、人の子だったと云う訳さ」
「・・・」
「もういいよ」
頭に手をやれば揺れる結紐。
うん、やっぱり結んでいる方がしっくりくる。
「昔はよく、貴方に結ってもらってましたねえ」
「君は不器用だからね」
懐かしむようにそう云った太宰に、そうだったかと昔に思いを馳せる。
夕日の赤に染まる街を見て、これからが本番かな、なんて思う。
太宰は気付いているだろう。
あの男が動き出している事に。
“死の家の鼠”
その頭目、ドストエフスキー。
・・・何か嫌な予感がするんだよな。
ここから先の出来事を私は知らない。
欠片すら残っていない私は生き残れるんだろうか。
さて、如何しようか。
(ほら芥川君、起きて下さいよ)
(・・・)
(ああ、駄目だ。完全に寝てる)
(これ、暫くは起きないだろうね)
570人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
汐里(プロフ) - Re-VI@TANさん» コメントありがとうございます!すいません、完全にミスですね。恥ずかしい。後程修正致します!作品を気に入って頂けて光栄です!一度陥ると中々抜け出せないのが難儀ですよね…応援有難う御座います!頑張ります! (2018年4月8日 9時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
Re-VI@TAN(プロフ) - ブランクではなくスランプ、では?私もよくスランプに陥りますねwでもそれは真剣に考えて作ってるからそこだと思います!先日この作品を見つけ、とても面白くて1日の半分ほどかけて読み続けてました。これからも頑張ってください!長々と失礼しましたorz (2018年4月8日 1時) (レス) id: 1436669b3d (このIDを非表示/違反報告)
汐里(プロフ) - 八重桜 蜂さん» 八重桜様、コメントありがとうございます!そう言って頂けて凄く嬉しいです!またぼちぼち更新していくので、楽しんで頂ければと思います。それでは失礼いたします! (2018年2月27日 23時) (レス) id: 77540e590f (このIDを非表示/違反報告)
八重桜 蜂(プロフ) - 続編とても楽しみにしてましたー!!1のときからずっと見てて、素晴らしい作品だと感心してました()応援してます!!! (2018年2月27日 23時) (レス) id: de911b9147 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:汐里 | 作成日時:2018年2月27日 22時